住まいの選択肢は大きく分けると、2通りがあります。一戸建て―いわゆる一軒家―と、集合住宅―マンションや団地など―です。都心を中心に広まっているのは、中古マンションのリノベーションですが、一戸建てをリノベーションするケースもあります。
どちらも同じリノベーションですが、できることやメリットが異なります。どんな違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴を見ていきましょう。
マンションリノベーションの特徴
中古物件の流通量が多い
中古マンションは、中古の一戸建てに比べ、流通量が多いという特徴があります。つまり、選択肢が豊富ということ。色々な候補のなかから選べます。
今すぐに気になる物件が見つからなくても、すぐにまた新しい物件が出てくるでしょう。
また、比較対象となる物件が多いため、相場価格が形成されやすいのも利点です。このぐらいの物件は大体いくらと、見当をつけることができます。
便利な場所にあることが多い
マンションは交通のアクセスが良いところやお店が多い商業地に建てられる傾向があります。駅や商業施設に近く、買い物やお出かけに便利な立地を求める人にとっては、選択肢が広がるでしょう。
こうした立地は、年をとってからもメリットになります。通院や買い物の際、移動の負担が少なくて済むからです。最近では郊外のマイホームを手放して、便利な場所にあるマンションに引越してくるシニアも少なくありません。
リノベーションできるのは専有部だけ
マンションは一戸建てに比べて、リノベーションの自由度が下がります。リノベーションで変えられるのは専有部と呼ばれる室内だけです。外壁などはもちろん、窓やドア、バルコニーなど、自分たちしか使わない場所であっても、共用部となっているところは変えることができません。
たとえば、窓。室内が寒い場合、サッシを取り替えると密閉性があがり、寒さが和らぎます。でも、マンションではサッシの取り替えはできません。
その場合も内窓をつけるなど、マンションで可能な範囲での工夫はできます。ですから、リノベーションをすれば住み心地は変わりますが、一戸建てと比べると、リノベーションできる範囲は狭まります。
共同で管理する
マンションは建物の管理を住人が共同で進めるという特徴があります。建物の管理というのは、たとえば、マンションの使い方のルールづくりや設備の点検、大規模修繕の準備などです。
管理組合は全世帯が参加する総会と、役員が参加する理事会があります。役員は持ち回りで務めることが多く、長く住んでいれば順番が回ってくることもあるでしょう。この総会や理事会でマンション全体の決めごとを扱っていきます。
賃貸の場合は大家さんが組合員になるので、管理組合の存在に気付くことがないのですが、どのマンションでも行われていることです。
マンションの場合は毎月のローンのほかに、必ず、この管理組合の運営費用と、大規模な修繕に備えた修繕積立金を払わなくてはなりません。
建物は10年、20年もすると、大掛かりなメンテナンスをしなくてはならないため、修繕積立金として、少しずつ貯めていくのです。このお金の積み立て方が問題で、必要な金額を低く見積もり過ぎていたり、踏み倒す人がいたりすると、なかなかお金がたまっていきません。逆に、きちんと計画的に貯められているマンションでは、やるべき時に必要な修繕ができるので安心です。
一戸建てリノベーションの特徴
物件の数が少なくバラつきが多い
マンションに比べると、中古の一戸建ては希少な存在です。候補になる物件が出てくるまでに、ある程度、時間がかかることを心得ておく必要があります。
また、一戸建ては工法や管理の仕方がマンションに比べて多様なため、物件による差が激しいのも特徴です。状態のよい物件がある一方で、耐震性や耐久性を確認すると、補修工事に何百万とかかることもあります。特に、耐震工事は費用がかさむため、リノベーションするより新築した方が安いケースも出てきます。
なかには、建てた当時は適法だったのが、後で法律が変わったり、増築したりしたために、結果的に違法建築となってしまった物件も。この場合、住宅ローンがおりないという高いハードルもあります。
静かな環境にあることが多い
静かな住環境を求めるなら、住宅街にある中古の一戸建てはよいでしょう。
どんな都市でも都市計画というものがあって、どこにどんな種類の建物を建てていいかが決まっています。これは住宅系、商業系、工業系、それぞれがお互いの生活に支障をきたさないようにするために定められているものです。
低層住宅の環境を守るための地域では、高い建物や人通りが激しくなる商業施設は建ててはいけないことになっています。買った時はなかった大きな商業施設や娯楽施設が近くにできて、後で環境が悪くなるという心配はありません。(別の用途地域との境界線上にある物件では注意が必要です。)
リノベーションの自由度が高い
リノベーションの自由度は、一戸建ての方が高くなります。
室内だけでなく、郵便ポストや門柱などのエクステリアをいじったり、庭やベランダを自由にデザインしたり、手を加えられる範囲が格段に広いのです。マンションではエントランスや外廊下は変えられません。
吹き抜けや天窓をつくるなどの思い切った変更も、一戸建てなら実現できる可能性があります。(建築的に可能かどうか確認は必要です。)
法律の範囲内であれば、増築もできます。
リノベーション時はもちろん、将来のことを考えてもこれはメリットになるでしょう。家族が増えたら部屋を増やしたり、何か新しい趣味や仕事を始めたらそのための場所を増やしたりということも考えられます。(これも建築的に可能かどうか、確認は必要です。)
管理は自分たちでする
一戸建ての場合は、マンションの管理組合のようなものはありません。そのため、建物の管理についても自由度が高くなります。
たとえば、ペットの飼育や楽器の演奏。マンションでは管理規約でルールが決められている場合がありますが、一戸建てではペットの飼育や楽器の使用についても自分たちで決められます。
また、修繕や安全点検も自分たちのペースで進めることが可能です。毎月固定で修繕積立金が出ていくことはなく、家計に合わせて柔軟にコントロールできます。ただ、誰にも何も言われることがないので、いつか修繕が必要になることを忘れないようにしましょう。
まとめ:バラつきの少ないマンションか、自由度の高い一戸建てか
物件選びの段階では……
【マンション】選択肢が広く、便利な環境に立地。物件によるバラつきも比較的少ない。
【一戸建て】候補が出てくるまで時間がかかる。静かな環境に立地。バラつきが大きい。
リノベーションの段階では……
【マンション】共用部は変更ができない
【一戸建て】変更できる範囲が広い。増築も可能。
居住の段階では……
【マンション】建物の運用については、管理組合で決まる
【一戸建て】建物の運用については、自分たちで全て決められる
ちなみに、一戸建てはマンションより高いというイメージもあるかもしれません。マンションと一戸建てで、購入費用に違いはないのでしょうか。
現在は、地域にもよりますが、昔ほど大きな差はなくなっています(2018年時点)。
こちらは不動産のプロが使うデータベースに登録された、首都圏の中古マンションの価格をグラフにしたものです。
新規登録物件は売りに出すために登録した時の価格、成約物件は実際に契約が決まって売れた時の価格です。
購入金額は成約物件価格の方なので、こちらを見ると、2017年は3200万円台となっています。
では、中古の一戸建ての方はどうでしょうか。
中古の一戸建ての方は、2017年は成約物件価格が3100万円台となっています。
こうした数字からすると、一戸建てが高くて買いづらいとも限らなくなっているようです。
マンションの方が駅に近く、地価が高い傾向もあります。単純に価格だけで比較はできませんので、マンションをリノベーションするか、一戸建てをリノベーションするかは、条件面や住まいに対する価値観で比較検討しましょう。
監修:佐藤剛(ゼロリノベ)