夫と妻と、犬が一匹。築37年の中古マンションを買って、リノベーションをする話です。

家族紹介

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見えない道具は使わないし、届かない皿は出さない。

これは、わたしが11年の主婦生活のなかで見出した、キッチンにおける行動原理のひとつです。と言ってもあくまでも、わたしのようなズボラな人間の場合ですが。要するにわたしは、戸棚の開け閉めがきらいです。

キッチン概要

  • キッチン概要

これが、キッチン全体の平面図(簡略)です。おもな収納はA、B、Cの3箇所となるので、わたしのキッチン収納への思いとともに、説明していきます。

キッチンツールは吊るしたい

たとえば、味噌汁を作るときに便利な味噌こし器や、ぐるぐる回して葉野菜の水を切るサラダスピナーなど、あれば便利だけれど無ければ無いでどうにかなる類の調理器具を、所有しているにも関わらず、これまでわたしはあまり活用していませんでした。なぜならば、これまで暮らしていた部屋のキッチンでは、それらの道具はすべて、引き出しや開き戸の中、つまり、ぱっとは目につかない場所にしまってあったからです。どこにあるかは分かっているのに、「ま、いっか」と使わない。そうやって、年単位で月日が流れていったりするわけでした。

しかし、主婦には時々意識が高まるタイミングというのがあるもので、ふと思い立ってきちんと味噌こし器で味噌をといたり、サラダスピナーで野菜をしゃきっとさせたりすれば、それはやはり便利で気持ちよく、さらにその使った道具が洗ったまま水切りカゴに置かれていたりすると、そのまま何の気なく継続して道具を活用できたりするのでありました。だからわたしは思ったものです。

「出しっぱなしって、楽だな」と。
「もうぜんぶ吊るしておきたいな」と。

これはとても大事なことだったので、最初の打ち合わせの際にきちんとフジコ先生には伝えてありました。ちなみに、大阪のマンションにはキッチンツールを吊るすためのバーがあったのですが、ガスコンロの上部にあったせいで、吊るしたものが片っ端から油でベタベタになる始末でした。なので、バーはコンロ側ではなくシンク側に、というのも重要なポイントでありました。

そこで、Aの収納はこのような感じとなりました。

  • 業務用キッチン側

「もうぜんぶ吊るしておきたい」と思いバーをつけましたが、わたしは身長が154cmしかないので、届く高さを考えると大きなフライパンなどをかけるには低い位置にバーがきた(タイル部分の段差につかえてしまう)(この段差は構造上必要)のが誤算といえば誤算でありましたが、大きな道具の収納は、業務用キッチン下のオープン棚を活用することで対応できるだろうと考えました。

皿の奥の皿、の煩わしさ

食器の収納については、前々から思うところがありました。
大阪のマンションでも東京のマンションでも感じていたのですが、既存の食器棚は、奥行きが深すぎませんか?

皿の多くはガラスや陶器でできていて、基本的には「割れ物」です。それなのに、食器棚の奥行きが深いと、皿の奥にさらに皿を置く、という状況になりがちで、奥の皿を使うには、手前の皿を一度出すか、当たらないように慎重に腕を伸ばす必要があります。わたしには、その動作がとても面倒くさく感じられます。それに、奥に置くと見えなくなって、存在を忘れてしまうし。だからフジコ先生には、「食器棚の奥行きは浅めで」「そして扉は要りません」というオーダーをしました。ほこりは、気になったときだけさっとすすげばよいという考えです。

アンティークの食器棚を購入して置くのもよいかもしれないと考え、目黒通りなどのアンティーク家具屋を少し回ってみたのですが、「奥行きが浅い」「扉がない」「設置場所のサイズに合う」という条件に見合うものは見つかりそうになく、結局、天井まで高さのある食器棚を造りつけてもらうことになりました。

  • 食器棚b

とにかく出し入れがしやすい棚にしたいというわたしの要望を聞いて、フジコ先生が棚に段差をつけてくれ、さらには棚板はすべて可動式という素晴らしい食器棚となり、とても満足しています。

プリンセスの居場所

突然ですが、この商品をご存知でしょうか。

  • プリンセス
    Amazon:http://amzn.asia/7p5lq4Y

これは、プリンセス テーブルグリルピュアというオランダの家電なのですが、要するにホットプレートです。夫は何かとテーブルの上で焼くのが好きで、これは遠赤外線でよく焼けるうえに煙も出ないし見た目もよい、ということで購入しけっこう愛用しているのですが、唯一の欠点として、収納場所がないというのがありました。

何というか、長細いのです。サイズでいうと幅614×奥222×高70mmなのですが、この614mmというのが曲者で、なかなかこの長さをすんなりと受け入れる収納スペースというのが無い。そして白いプレート部分を設置したまま垂直に立てることが出来ないので、水平に置く必要もある。通販サイトで「見た目がオシャレなので出しっぱなしにしていても大丈夫!」などという謳い文句を何度か見かけましたが、使っていないホットプレートが出しっぱなしになっている状況は全くもって好ましくないとわたしは感じるので、このプリンセスにぴったりの居場所を作りたい、と考えていました。

  • コンロ側c

というわけで、「プリンセスの居場所」を作ってもらいました(図、左上)。このモールテックスのアイランドカウンターの収納に関しては、プリンセスだけでなく、電子レンジ、ラップ類、フレッシュロックに入れた粉物類を入れる引き出し、オイルポットなど、「置くはずのもの」にそってかなり細かくサイズを指定して作っていただき、とても便利にできたと思います。

それなりに長い時間をキッチンで過ごしたおかげで、何がどこにあれば自分が使いやすいかをきちんとイメージできたことにも満足していて、これは若い頃にはできなかったであろうし、キッチン収納のことを考えながら、リノベーションをするのが今でよかったなと思いました。

器をめぐる旅に出たい

長いこと、食器には興味がないふりをしていました。収納が足りなかったからです。もう少し前までは、いつ割るかも分からないお皿やグラスに5000円とか払えるほどには興味がなかったというのも本当です。100円ショップやIKEAの安い食器でもじゅうぶん事足りるし、なんなら軽くて丈夫で安心ではないかとさえ思っていました。けれども近年はわたしも大人になったのか、うっすら食器への関心が高まりつつあるのを感じていたのです。しかしその気持ちを無視していました。興味を持ったところで、収納が足りなかったからです。

でも、収納に余裕ができました。

これからはまず、学生時代から惰性で使ってきたただサイズが適正なだけの食器などを、順次気に入ったものに取り変えていきたいです。それから焼いた秋刀魚をうつくしくのせられるような長細い皿も欲しいし、作り置いたお酒のあてを少しずつ盛るための小鉢もいくつか欲しい。欲しい欲しいと強欲なものですけれども、なにかを欲しいという気持ちは日常にハリをもたらすなあと思います。

扉のない食器棚には、目に入るたびにうれしくなるような器を並べたい。なのでちょっと、器の薀蓄を勉強したりして、行ったことのない町に器をめぐる旅に出たりしてみたいです。

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    Casa BRUTUS特別編集 器の教科書

そんな感じで、いったんキッチンの話は終わります。次回は、修正を重ねた全体の間取りと、フローリングの床材の話をします。近年の無垢材信仰に一石を投じることになるかもしれませんが、どうか誰にも怒られませんように。

Q本かよ

qmoto_ap

俳優/コピーライター/デザイナー
舞台を中心に俳優として活動する傍ら、雑誌、広告でコピーやデザインの仕事を手がけている。
2017年に中古マンションを購入しリノベーション。夫と二人暮らし。曇天という名の犬もいる。