意外なとりあわせって、それだけで興味をひかれてしまいます。今回ご紹介したい場所もちょっと珍しい組み合わせ。神社とパン屋さんです。800年以上の歴史を持つ神社のなかに今年、素敵なパン屋さんがオープンしました。
真っ赤な鳥居の真横にパン屋さんが!
群馬県は高崎市。市街から少し離れた山名という地域に、その神社はあります。安産・子育ての神さまを祀った「山名八幡宮」です。
由緒正しい神社の佇まい。ここにお店があると聞くと、お団子屋さんかおそば屋さんでもあるのかなと思ってしまいますが……
鳥居に向かうようにして建っているのはパン屋さんなのです。築50年の空き家を改修してつくられた、こちらのお店は「PICCO LINO(ピッコリーノ)」という天然酵母のパン屋さん。
中に入ると、このとおり。スタイリッシュな今どきのパン屋さんといった雰囲気です。この意外性がたまりません。
天然酵母を使って素材の味を最大限に引き出したパン
「PICCO LINO」のパンの材料は群馬県産の小麦に水と塩、そして「ホシノ天然酵母」だけ。マーガリンやショートニングはもちろん、砂糖や卵、油も使いません。本当に素材だけで勝負しているパンです。
「PICCO LINO」でパンをつくる伊藤夫妻は「ホシノ天然酵母」の開発者ともやりとりをしながら、30年以上にわたって、やわらかく酸味の少ないパンを追求してきました。
現在は2種類の食パンをはじめ、レーズンパンやチーズパン、カンパーニュなど、13品目の商品を販売しています。対面販売なので「これはサンドイッチに合いますよ」なんて店員さんが教えてくれて、思わずオトナ買いしそうになります。
しっかりとかみごたえのある食パンはシンプルで飽きのこない味。一切、無駄なものを使っていないということが分かります。外はカリッと、中はフワッと。いくらでも食べられます。
包装やショップカードにもこだわりが!
パン屋さんならパンがおいしければいいのですが、やっぱり、細かいところにまでこだわりが見えると素敵ですよね。見てください、この写真。
店舗情報や商品情報が書かれたショップカード、パンのかたちをしているんです。これはオトメごころがくすぐられます。
そして、このパンの入っている袋。紙のクリップは「ゼロ」のかたちをしているんですが、添加物ゼロっていう意味なんですって。そういえば、お店のロゴにも「ゼロ」のマークが!
人が集まり、交流が生まれる場に
神社とパン屋さん。どこに接点があるんだろう? と不思議に思える組み合わせですが、何のゆかりもないかというと、そうでもないのです。
毎日、安心して食べられるパンを求めに「PICCO LINO」を訪れる人。安産・子育ての祈願にお参りする人。子どもの健やかな成長を願う思いは、どちらも同じです。
そして、近所のパン屋さんは普段から頻繁に足を運ぶ場所。
今でこそ、神社は日常生活からは遠ざかってしまいましたが、かつては地域の人が集まり、子どもが遊ぶコミュニティの拠点でした。
パン屋さんがきっかけになって、また神社に人が集まり、交流が生まれたら。神社のなかに誕生したパン屋さんには、そんな願いも込められています。
ピッコリーノ
山名八幡宮内にある天然酵母のパン屋。国産小麦を使い、小さな子どもからお年寄りまで安心して食べられるパンをつくっている。
住所:群馬県高崎市山名町1579-4
TEL:027-346-1767
URL:http://www.piccolino-pan.com/
WRITER'S VOICE
パンを買いに行ったら、ちょっと不思議な空間も味わって
近くに寄れば、パン屋さんらしいパン屋さん。でも、下がって全体を眺めると、神社の景色に違和感なく溶け込んでいます。
シンプルで素朴な空間はピッコリーノのパンと似て、じんわりと味わい深い印象。実は、パンの棚やカウンターには元の建物に使われていた天井材が使われているそうです。パンを買いにいったら、ぜひ、そんな空間も一緒に味わってみて。