コンテンポラリーなマンションや飲食店などのショップが並ぶ目黒通り沿いに、突如あらわれる古い日本家屋。少し重いガラス張りのドアを横にスライドさせると、そこには“異空間”が広がっていました。同じ通り沿いに点在する他のインテリアショップとは一線を画するその雰囲気に、思わず圧倒されます。
遠い日の大陸の暮らしに思いを馳せて
目黒通りの中でも珍しい、中国のアンティーク家具を取り扱うのがSilkです。ひとくくりに『中国家具』と言っても、そこはやはり4000年という気が遠くなるまでの長い歴史と、広大な土地をもつ彼の国。時代や生産地によって、そのテイストは大きく変わります。
そもそも中国家具の基礎となるスタイルは、宋の時代となる西暦1000年前後にはすでに完成されており、そこからさまざまに変遷していったと、スタッフの石原さんが教えてくれました。
「一般的に『中国家具』と聞いて思い浮かぶのは、高級な中華料理屋さんにあるような、真っ赤や真っ黒なものに、金の飾りがあるようなイメージかもしれません。でも古いアンティーク家具は、ものすごくいい木材を使用していて、塗りなどの装飾もほとんどないんですよ」
Silkで取り扱っているのは、主に1800年代〜1900年代初期、つまり清の時代の家具や生活用品。椅子や机、収納、建具など、現地中国にて買い付けてきたアイテムには、西洋の文化には見られない強い“クセ”が深く刻まれており、見ているだけですぐに夢中になってしまいます。
「ここにあるものは、今の時代で例えるなら有名なメーカーや有名なデザイナーがつくったものではなく、中国のあらゆるところで日常的に作られてきたものです。そこには当時の生活様式や人々の宗教観などが色濃く反映されており、それこそがプロダクトとしての魅力になっていると思います」
儒教や道教、仏教、また風水や縁起物、四季の移ろい……棚や装飾品などに描かれた印象的な絵や図柄には、一つひとつに別のストーリーが潜んでいます。店内に所せましと並べられたたくさんのアイテムをじっと眺めていると、遠いいにしえの時代から息づく大陸のエネルギーのうごめきを感じてやみません。
オリジナル家具も人気沸騰中です
一部では、「作りがよくない」「粗悪品」としての印象がある、現在の“中国製”のプロダクト。しかし、アンティーク家具はそうではありません。黃花梨(おうかりん)や黒檀、タガヤサンなど、希少性が非常に高く、家具に適した硬さを持つ木が使われているものが多く、中には1脚の椅子が数千万円で取引されることもあるとか。そんな中国アンティークの家具を、どのように生活空間に取り入れるのがいいのでしょうか。
「まずはポイントで使うのがいいと思います。例えば西洋スタイルのダイニングテーブルとデザイナーズチェアがあって、その横に中国のキャビネットを置いたり、モダンデザインの家屋の廊下の突き当りに中国の椅子をセットしたりすると、意外とマッチしますよ。あとは、直感ですね。買ってから商品にまつわる知識を得ていくのも面白いと思います」
最近では、現地で買い付けたアンティークだけでなく、現代風のエッセンスを取り入れたオリジナル家具の展開もスタートし、ミックススタイルの提案も行っています。“ザ・チャイニーズ”を思わせるどストレートな中国テイストが気になる方は、そちらもオススメです。
「オリジナルのガラス天板のテーブルが人気ですね。中国と言えば漆を使った艶のある黒のイメージがありますが、同時に墨の文化でもあるので、ススで着色されたマットなニュアンスを出すこともあります。当店のオリジナルテーブルもそれを模した質感を出していて、脚の部分にも中国の伝統的なカタチを取り入れています。サイズもオーダーできるので、一般のお客様から飲食店やアパレル関係まで、さまざまな方から発注いただいていますよ」
街のインテリアショップも、大型の量販店も、西洋のスタイルが主流となった昨今。そこに、“アジアン”でも“和モダン”でもなく、中国アンティークを取り入れれば、他にはないお部屋の仕上りが期待できるかも!?
PHOTO by Yusuke Nishimura
Silk
中国のアンティークは、ものすごく繊細な技術力が発揮されているところと、ざっくりと豪快に作られているところが混ざっていて面白いですね。また、当時の人々の生活感や思想などが汲み取れるところもよいと思います。まずは空間のアクセントとして1アイテム、取り入れてみてください。
by スタッフの石原さん
東京都目黒区目黒4丁目10−3
Tel. & Fax. 03-6452-2717
平日:11:00 – 20:00 不定休
http://www.demode-furniture.net/silk/