大鳥神社から油面方面へと向かう坂の途中。ガラス越しに見えるカラフルなソファが印象的なショップがありました。そこは、この一帯が“インテリア通り”なんて呼ばれるもっと前から、街の移り変わりをずっと見守ってきた、オーダーメイドのお店です。
世界にひとつだけ、を手軽に。
目黒通りではただひとつ、都内でも数少ない“オーダーメイドソファ”のお店が、STANLEY’Sです。店主の藤元さんは、3代にわたってイスやソファを作ってきたご家庭に生まれ、小さな頃から、イスに囲まれて育ってきたとのこと。おじいさんが昭和天皇のイスの椅子張りを行っていたと言うから、その歴史と由緒には脱帽です。藤元さん自身のキャリアは、お父さんが経営していたイス工場で、日本に住んでいた外国人向けオーダーソファの製作を担当していたところからはじまります。
「日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、海外では、ソファのデザインや生地、座り心地などを選んで、自分の好みにカスタマイズするのはそれほど珍しいことではありません。日本でもそういうソファの選び方や楽しみ方を導入することはできないかなと思い、23年前にこのお店を始めました」
面白いのは、ベースのデザインとなる数種類のソファの名前です。メアリー、ナンシー、ジョージア、ジュリア……と、海外の人名ばかり。そういえば、お店もSTANLEY’S(=スタンリーさんの)と、人の名前がついています。
「かつて私が留学していたカリフォルニアのスタンフォードのライフスタイルにフィットするソファをイメージして、このお店をスタートさせました。当時、私がホームステイしていたのが、スタンリーさんという方の家。つまり、このお店の名前です。そして主力商品のひとつである『バーバラ』は、その奥さんの名前なんですよ。
私にとってソファは、人間の分身のような存在なんです。だから、それぞれのデザインが男性なのか女性なのかを考えて、知人の名前をつけていきました」
100年つかって、受け継いでいく。
藤元さんによると、創業当時はやはり、日本に住む外国人や、海外暮らしの経験を持つ日本人からのオーダーが多かったとのこと。
しかし、そこから数年後、フランス製の生地を大胆に使った奇抜なデザインを提案し、それが雑誌に取り上げられることがきっかけになり、現在では一般の方にもソファをオーダーするという文化が浸透していっているそうです。
「すべての商品は、オーダーを受けた後、ゼロからつくっていきます。だいたい1〜2ヶ月で出来上がりますね。まずはベースとなるデザインを選び、そこから生地や座面の固さなどを決めていきます。たとえば、『A』の座面に、『B』の肘をつけて……なんて選び方もできますよ。
さらに、フルオーダーも可能です。たとえばイメージに近い雑誌の写真などを持ってきてもらえれば、どんなカタチでもほとんど作れると思います。これまでお断りをした記憶はありません」
また最近増えているのが、すでにあるソファのリペア。量販店で買ったもののあまり座っていない。家で飼っている猫が爪でひっかいて生地がボロボロ。そんな“あまり愛されていない”ソファをSTANLEY’Sに持ってくれば、また新しい命が吹き込まれるかもしれません。
「海外では生地を張り替えたり、壊れた部分を修理したりしながら、ソファを100年近く使うこともあって、たとえばおばあちゃんが孫に受け継ぐなんてこともよく聞かれます。
同じように日本でも、気に入らなくなったり、破れたりしたからといって使い捨てにするのではなく、できれば手を加えながら、長く使っていってほしいですね。廃棄すると大きなゴミになって、環境に負荷を与える可能性もありますから」
多くのリビングにとって、ソファは主役となりうるもの。古くなったから。はたまた、引っ越しを機に。その度に買い換えていくのもいいですが、少しずつ手を加えながら、長く、家族の思い出をソファに刻んでいく、なんて暮らし方もいいかも!
PHOTO by Yusuke Nishimura
STANLEY'S
当店でソファをつくられた方や、修理をされた方には、簡単にデザインには飽きることはないし、生地を張り替えれば、また印象がガラッと変わるということを知っていただけているようです。「また10年後にお願いします!」と言っていただけていますよ。
自分にあったソファをじっくり選んで、本当にリラックスできる空間をつくってもらいたいですね。
by 店主の藤元さん
東京都目黒区目黒4-10-6
Tel. 03-3760-7167
Fax. 03-3760-7168
Email info@stanleys.co.jp
11:00(日曜は12:00)~19:30 木曜日定休