日差しがどんどん柔らかくなり、空気が冴え冴えとしてくる今の季節が、私は1年の中で一番好きです。秋の真ん中は、これから暑くなるのか寒くなるのかを見失うような塩梅で、それがとても情緒的で素敵なんですよね。世間一般的にも、読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋と、何をするにも最高の気候と言われます。今回は、『大正浪漫』の名を冠すグラスをきっかけとして、大正時代へ思いを馳せてみませんか?
現代まで続く、ガラス文化が花開く。
『大正』というと、何を思い浮かべるでしょうか? 西洋の文化が明治時代よりももっと近づき、溶けあい、新しいカルチャー形成がなされた時代。国内外での戦争や、工業化、交通手段の発達、新聞・雑誌の普及など、生活を取り巻く環境が大幅に変化していきました。個人の思想の解放や、新しい時代への理想と期待に日本中が沸いていたのです。
そんな中、食器やビン、照明など、私たちの身近にある数々のガラス製品も、庶民に広まっていきます。安価でカラフル、さまざまな図柄を持つお皿やお椀が、日常のすみずみまで浸透し、市民権を得るにつれ、美術工芸品としてのガラス製品が志向されはじめたのもこの頃でした。
『大正浪漫』の名を持つこのグラスは、東京で最も古い歴史を持つ硝子食器メーカー『廣田硝子』の工芸商品。熟練の職人が、明治・大正時代に盛んに使われた伝統的な技法を用い、当時のやさしい乳白オパールの色を、現代に再現しています。浮き上がるのは、日本古来の柄。その美しさと繊細さをぜひご覧ください。
現代は、多くのモノが溢れ本当に望むものや、自分の生活に合うものを取捨選択するのが難しくなっているかもしれません。その中で、もしあなたが食器に情熱を傾けたい。そのように思うのであれば、ぜひ一度、お持ちのグラスを並べてみてください。さて、どのような思いでそれらを手に入れたのでしょう?
私はグラスが好き。だってその透明さも、冷たさも、硬さも、なぜか心をくすぐるから。『大正浪漫』、その名前にどうしても惹かれてしまう。だってなんだか素敵な物語を想像できそうなんだもの。だから今日は、大正時代に思いを馳せながら、秋にかこつけて読書でもしてみようかしら。お供はそう、『大正浪漫』で。そんな粋な夜も悪くない。
【冷茶 五客揃え/大正浪漫】
大正浪漫ガラスは、明治大正時代に盛んに使われた日本独特の成型方法で作った乳白色のガラス器。ガラスの中に特殊な原料を入れ急激な温度差を与えることによって乳白色に発色させる、熟練した職人と精密な紋様の金型により生まれる特別な工芸商品です。
サイズ:7.2x6cm
容量:140ml
全5種(市松、水玉、十草、波、つなぎ格子)
公式サイト:http://hirota-glass.co.jp/
(価格・ラインナップは2017年10月現在のものです)
¥14,040(税込)