建築家と叶える、世界にたったひとつの“似合う家”【スエロ建築研究所 / SUITO HOUSE】
憧れのマイホーム。建てるとしたら、どうするの? テレビのCMで見たことがあるような大手のハウスメーカーさんにお願いする? それとも駅前の商店街で見かけた工務店さんとコラボ!? やっぱり建築家の“先生”にお願いするのって、すこしハードルが高いのかな???
スエロ建築研究所のお二人、そこのとこ、どうなの!? 教えて!!
ひとつの家に。街全体に。建築家ができることを探して。
『SUITO HOUSE』の施工事例の紹介に移りましょう。実際の模型を見ながら、完成までのお話をうかがったのは、大阪のベッドタウン、和泉市に建てられた『はつが野の家』。
この家に住むご家族は、最初に模型を見た時には「これは本当に家?」と驚いたと話す旦那様と、「気になっていた部分がすべて解消された」と話す奥様、そしてお二人のお子さんを加えた4人家族だそうです。
「設計面で重要なポイントとなったのは、中庭です。『バーベキューが楽しめるようなスペースにしたい』というオーダーがあったので、どういう中庭にするのが一番いいかを徹底的に考えました。カタチが決まるまで、完全に閉じられたものや、コの字になったものなど、かなりたくさんの提案をしましたね。
最終的には、半分が開かれていることで、外からは入りやすいけれど、リビングから見ると閉じられているものになりました。プライバシーと公共性を併せ持ったカタチですね」
この家が位置するのは、新興住宅地で治安もとてもよく、子どもが多い地域。若い世代のコミュニティも形成され、近所付き合いに対しても積極的な場所だそうです。
実際に家が建った後は、当初の希望どおり、家族でバーベキューをしたり、ご近所さまが集まったりと、気軽に人を呼べるスペースとなっています。
「もう1つの課題は、『子どもの気配を常に感じたい』という希望をいかに叶えるかということ。二人のお子さんが家の中のどこにいるのか分からないようなものではなく、それでいて、適度のプライバシーも確保する。そう考えてできあがったのが、この設計です。
この家は、階段のない2階建てで、玄関をあけると、扉などはなく、まずリビングがあり、キッチン、お風呂、サンルーム、そして子ども部屋、寝室が順番に出てきます。つまり中庭の周りをぐるっとまわりながら、グラデーションをかけたように、プライベート性の高い空間へとつながっていくんです」
「また、家族同士の気配をより身近に感じられるように、部屋同士をきちんと区切ることもしていません。各フロア少しずつ段差をつけて、目線の高さをずらすことで、プライバシーを確保しながら、角を曲がれば完全に視界から消えるようになっています。
そうやって、平面的にも断面的にも目線をずらすことで、ドアなどで空間を区切ることなく、でもゆるやかな区切りはある状態になっているんですよ」
ハウスメーカーや工務店ではなく、建築家の叡智が詰め込まれたフルオーダーだからこそ、唯一無二、世界にたったひとつの家が完成しました。実はこの『はつが野の家』は、テレビや雑誌でたびたび紹介されるなど、その注目度は高く、訪れた知人や友人も、必ずといっていいほど「また遊びに来たい」と話すそうです。
「この答えにたどり着くまでは、本当に大変でした。何度も模型をつくり、要望を聞き出し、それを分解しては、また模型を作り……。でも、その工程を何度も繰り返すうちに、施主様も『このカタチしかない!』と非常に喜んでくれて。その瞬間に、そこまでの苦労や大変さはすべて帳消しになりましたね」
『SUITO HOUSE』を通して、よりお客様に寄り添う家づくりを提案・発信していくスエロ建築研究所のお二人。最後に今後の展望に関しても、少しだけ。
「僕は建築に限定せず、『街をよくしていく』ということをしていきたいですね。地域の人が集まって何かを作るのもよし、ただ遊ぶだけでもよし。たとえば道に“ケンケンパ”のマークがあるだけで、子どもたちはそこで遊びだします。そういう風景っていいな、と。そういうワークショップみたいなものを考えています。
現代の都会の生活では、消えつつある暮らしの良さが日本にはあったはずです。それらが継承されない原因を紐解いて、また呼び戻すためのきっかけとなる働きかけをするのも建築家の仕事なんじゃないかな」
中塚さんは、そう話します。また、眼差しの奥に強い意志を宿しているのは、栢木さんも同じ。
「僕は自然が好きなので、農業や林業と街をつなげる何かがしたいと思っています。いま、近隣の里山で林業をやっている方から、『間伐材を使って何かできないか』というような話が来ています。
建築家の立場からできることは必ずあって、人々の生活が街やその他の環境につながっていくきっかけもたくさん作れるはずなんです。それは僕たちの時代だけじゃなくて、後世にも伝え遺していくためでもあります。建築って、ずっと残っていくものですからね」
一人ひとりのお客様とその家に時間をかけて向き合うこと。そして、さらにその外側へと働きかけること。建築家に課せられる使命は、社会的な意義を帯びるまでに大きく、やりがいに満ちたものだと知ることのできる貴重な時間でした。
PHOTO by kazufumi nakamura/Yohei Sasakura/Genta Hisada
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WRITER'S VOICE
分からないことは、ぜんぶ聞けばいい。うん。ぜんぜん怖くない(笑)
僕は賃貸住まいで、マイホームを建てる予定も今のところまだないけれど、お二人の話を聞いて、その難しさがよく分かりました。でもそんな時に、親身になって相談に乗ってくれる建築家がそばにいるのは、とても頼もしいですね。
お二人と話すうちに、実際に建築家さんと一緒に家を建てたいと思ったのが、何よりの証拠。某テレビ番組に出てくる、いかにも“先生”って感じではない、お二人の気さくな人当たりが印象的でした。
家づくりの経験なんて、1度あるか、1度もないかのどちらかでしょうから、“ない派”の我々には、リテラシーもなくて当然。ぜんぜん怖くないから、“その時”が来たら、建築家に頼んでみようかな?