夫と妻と、犬が一匹。築37年の中古マンションを買って、リノベーションをする話です。

家族紹介

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スターバックスは好きですか? わたしは好きです。スタバでMacを広げるタイプの人間です。ホワイトモカが好きです。

ダイニング、への憧れ

育ちの悪さをわざわざ披露するようで恥ずかしいのですが、わたしのこれまでの人生には「ダイニング」という空間がありませんでした。もっと正確に言うならば、ダイニングをダイニングとして正しく扱う生活をしたことがありません。

実家には、いま思えばあれはダイニングだろうと思える部屋がありましたが、うちは飲食店を営んでいたため、食事どきが稼ぎどき、というわけで家族揃って食卓を囲むということがあまりなく、帰宅すると、お店の注文と同じ流れで「なに食べる?」「うどん」などと答え、出来上がったものを茶の間へ持っていきテレビを観ながらひとりで(あるいは姉とふたりで)食べる、というのが普通だったわけです。

それでも、友達の家で「ダイニング」を目にする機会はあるわけでして、それは幼少期のわたしにとっては憧れの光景でした。ひとりぶんの定食や丼ものではなく、食卓いっぱいに並ぶ大皿小皿のおかず、いかにも楽しそうな家族の団欒。これはべつにひとりで食べるのが寂しかったなどという話ではなく、ダイニングテーブルを囲んで家族で食事をする様子は「テレビドラマでよく見るやつ」だったからです。能登半島の田舎育ちなものですから、なるべくテレビドラマに近い生活をするのがカッコイイと思っていました。かわいいものです。

今はもうテレビドラマへの憧れはありませんが、ダイニングへの憧れはやっぱり残っていて、今回のリノベーションで、ダイニングをつくるのに充分なスペースが確保できるとなったときは、ヨシ、と思いました。ヨシ、恰好いいダイニングにするぞ、と。

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    改めまして間取りです。ここがダイニングです。

重たい鉄の脚

プラン打ち合わせが始まってから、暇さえあればインテリアショップを巡っていた我々夫婦でありますが、ダイニングテーブルに関してはなかなかイメージを共有できずにいました。と言うのも、わたしのほうが多分イメージが湧いていなくて、夫が「これは?」「こういうのは?」と提案してくるものに「悪くないけれども……」と首を傾げてばかりいたのでした。こういうのがいい、という感覚は確かにあるのに、こういうのがどういうのかが自分で掴めない、という、何ともはがゆい状態でした。

しかし、頭で考えるよりも足を動かせとはよく言ったもので、ピンとくる出会いを求めてインテリアショップを渡り歩いていたところ、やっとその感覚の正体を掴むことができたのです。そのお店は、雑誌の「JAPAN VINTAGE SHOP BEST35」という特集でピックアップされていた、学芸大学にある「ANTISTIC」というヴィンテージ家具屋さんなのですが、そこにお店があることを知っていないと絶対に辿りつかない少し奥まった場所にありました。

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    「完全保存版」を鵜呑みにして切り抜いて保存していた。もはや何の雑誌のページだったか思い出せない。
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    11ばんに載っているのが「ANTISTIC」

ANTISTICに、一台のテーブルがあって。大きなテーブルでした。天板は木で、脚は鉄。そして重い。わたしが寄りかかってもびくともしない、どっしりと重たいテーブルがありました。

これだ、と思いまして。わたし。
この感じ。これがいい、と。
わたしが求めていたものの正体はどうやら「大きさ」「重さ」でした。

ANTISTICにあったテーブルは、8人掛けできるほどの大きな天板が、重たい鉄の脚に支えられて、頼もしい存在感でそこに置かれ、この感じは覚えがあるぞと思ったら、それはスターバックスの、あるいはSATURDAYS SURF NYC大阪店の、大きなテーブルなのでした。

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    大阪時代によく行っていたSATURDAYS SURF NYC。電源がたくさんあるしWi-Fi(聞けばパスワードを教えてくれる)も安定していて気に入っていました。ホットサンドがとても美味しい。

人よりもテーブルのほうが、空間に対してイニシアチブをとっている。という感じが好きです。上手く言えないのですが、「家具」というより「建造物」に近い感じでテーブルがそこに在る、みたいな。カフェなどにはそういう印象のものが多くて、その頼もしさが、家のダイニングテーブルにもあるといいなと、思っていたのです。

オーダーするという発想

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このANTISTICで見つけたテーブルは、既にソールドアウトとなっていました。そもそもサイズもうちの間取りには少し大きすぎたのですが、夫とわたしが「でもこれ格好いいなあ」「いいなあ」と話しておりましたところ、お店のお兄さんが提案をしてくれました。

「もしよければ、同じような鉄脚を探しておきますよ。それで天板は別で用意してもらったら、ここで脚とか縁とかこっちで取り付ければいいですし」と。

それまでインテリアショップで既製品ばかり探していたわたしは、脚と天板を別々に買うという発想がなかったし、ヴィンテージ家具屋さんがどういう仕組みで運営されているかも知らないので「同じような鉄脚を探す」ということが可能ということにも思い至っていませんでした。だから「そんな手があるのか」と素朴に驚きました。いま考えると普通のことのようにも思うけれども、注文して作る、という選択肢を得たときは、ぐんと世界が広がった気がしました。

というわけで我々は、お店のお兄さん、もとい、ANTISTICの小林さんの提案を受け入れ、鉄脚を探してもらうことにしたのです。となると天板はどうする、という話になるわけですが、そこは小林さんが木材加工を生業としているお知り合いを紹介してくださいました。

この小林さんというひとは、見た目は色黒でひげ面でちょっと怖いというか「うちは好きなもの集めて気ままにやってますんで、買いたい奴は買っていきな」みたいなぶっきらぼうな店主に見えたのですが、話してみると大変に気さくで、二言目には「お客様満足度が大事」と言う優しくて面白いひとでした。ANTISTICの小林さん、今後もちょくちょく登場するのでどうぞ覚えておいてくださいませ。

そんな感じで鉄脚を注文した我々、次回は天板を選んだ話を書きます。小林さんが紹介してくださったLOGGERさん。場所は茅ヶ崎。なかなかの遠出でありました。

Q本かよ

qmoto_ap

俳優/コピーライター/デザイナー
舞台を中心に俳優として活動する傍ら、雑誌、広告でコピーやデザインの仕事を手がけている。
2017年に中古マンションを購入しリノベーション。夫と二人暮らし。曇天という名の犬もいる。