「子供から大人まで楽しめる」 場所って、なかなか難しいものです。キッズエリアはカラフルな遊具が並び、そこで子供が遊ぶのを大人が「見張る」場所。対して大人をメインにした静かな場所は、子供が嫌がりぐずってしまいがちです。子供、大人、みんなが居心地よく過ごせる場所って、なかなか見つからないものじゃないでしょうか。
子供から大人まで楽しめる「古墳」型の公共施設
コフフンは、JR・近鉄天理駅前につくられた公共広場です。約6000㎡の広場の中に、遊具、屋外ステージ、カフェや観光案内所といったさまざまな施設が併設。駅前の好立地ということもあり、世代を超えたさまざまな人たちが集まる場となっています。
コフフンをデザインしたのは、Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」にも選出された佐藤オオキ氏(デザインオフィスnendo代表)。イタリアのミラノにも拠点をもつ世界的デザイナーです。彼は、普段の生活の中に調和しながら「ちょっと暮らしが便利になる」デザインを得意としています。
そんな彼が今回設計したのは、「古墳型」の公共施設。宗教都市としての一面を併せもつ天理市は、多くの古墳を有しています。佐藤オオキ氏は、天理市において日常生活に美しく溶け込んでいる古墳の外観をヒントに、ここで生活に馴染む施設「コフフン」をつくりました。
ちなみに広場の名称である「コフフン」にもこだわりが。コフフンはモチーフである「古墳」と、「フフン~♪」と鼻歌を歌いたくなるような心地よさ、また市民が「フフンッ」と自慢できるような場所になってほしいとの思いを込めて名づけられたそうです。さらに英語表記の「CoFuFun」には「co(共生、仲間)」と、「fun(楽しい)」が含まれており、海外の訪問客にもそれとなく意味が伝わるよう、工夫したそう。
コフフンは子供も大人も同じ場所にいながらそれぞれ楽しめるよう、つくられています。 例えば子供が遊べるトランポリンでは、その周囲に座れるスペースが設けられています。大人はそこで子供を見ながら座ってお茶したり本を読んだり。色を統一してシンプルなデザインで設計されているので、子供の遊具スペースでありながら大人も居心地よく過ごせるのではないでしょうか。
またもちろん子育て世代だけでなく、幅広い年齢層が使用できます。学生が広場で寝転んでいたり、会社帰りの女性がカフェで一人お茶したり。健康器具もあるのでお年寄りが遊ぶ子供たちを眺めながらストレッチすることもできます。
施設内にはイベントスペースも併設されており、利き酒ワークショップ、お絵かき教室、マルシェなどさまざまなイベントが行われています。イベントやコンサート会場の利用履歴など見ても、かなり幅広い世代の住民が活用している様子。「人が集まる」場所づくりはなかなか難しいものですが、今回のコフフンは好例なんじゃないでしょうか。ありきたりでも、突飛でもない「場所」に馴染むデザイン。今後の天理市の新しいランドマークとなってほしい施設です。
コフフン
奈良県天理市にあるJR・近鉄天理駅の駅前広場。
天理市の「歴史」「地理」「文化」という3つの要素を凝縮したデザインとするため、市内に約1600基も点在しながら日常生活に美しく溶け込んでいる「古墳」をアイコンとして選びました。
公式サイト:http://cofufun.com/