目黒通りからは少し外れた住宅街にひっそりと店を構えるNO NAME PARISH。一見、オーダーショップかセレクトショップのようですが、北欧家具を中心に扱うビンテージショップです。店内にはソファやテーブルがゆったりと置かれ、白い壁にはビンテージのアートポスターが飾られています。
使った後も視野に入ったロングライフデザイン
北欧家具をあえて一言で表すなら機能美。木のぬくもりと素朴な優しさが感じられる北欧の家具は構造的にも優れています。『NO NAME PARISH』で扱うのは、その中でも1960〜70年代につくられたもの。でも、すべて今も現役で使えるものばかりです。
「北欧の家具は後で再生して使うことまで意識したものが多く、バラして修理しやすい構造になっています」とオーナーの西山さん。素材のクオリティも高く、再塗装などの手を入れれば大半の家具は元のきれいな状態に戻ると言います。
デンマークを中心に買い付けていますが、このロングライフデザインの考えかたでつくられた家具ならば、ドイツやスウェーデン、北欧以外の国のものでも扱うそうです。日本のメーカーがつくっている照明もありました。
「今では希少になって手に入らない素材や、人手がかかっても許された時代だからこそのデザインもあります。今のものとも比べてもらって『これだけキレイになるなら新品と変わらないね』と、フラットな目線で見てもらえたら、うれしいです」
ヨーロッパにいいビンテージ家具が残っているのはなぜか?
家族が増えたタイミングは家具の購入を考える理由のひとつ。納品に行くと、小さなお子さんがいることも多いそうです。そんな時、西山さんはあることを心がけてやっていると教えてくれました。
「メンテナンスのしかたをお子さんに伝えています。『こうやるとピカピカになるよ、一緒に拭いてみようか』と呼びかけて一緒にやってみるんです。実際に拭いてみてキレイになった経験をすれば、これは大事に使うものだと分かります。自分でピカピカにしたものに落書きしようという気分にはならないでしょう。モノを大事に使うことを実践で教えていってあげることも大切だと思っています」
「触っちゃダメ」と禁じたり、カバーをかけて対策したりといったこともできますが、子どもも分かれば雑に扱ったりはしません。実際、教わった通りに一生懸命、拭いている子もいるそうです。
「ヨーロッパの人達はそれをきちんとやっているので、30年40年経っても状態のいい家具が残っています。ビンテージとして、こうやって販売できるのもそうした文化が背景にあるからなんです」と西山さん。
良い家具は丁寧に使えば、次の世代に受け継ぐ財産にもなり得るのです。
「北欧の家具は一見ベーシックに見えますが、細部にこだわりがあるのが魅力。シンプルな分、工夫次第で色んな表情が見せられます。夏なら涼しげなコットンのブランケットを合わせたり、冬は暖色系のクッションを合わせたり。シーズンに合わせて着替えられるので何年経っても新鮮さが味わえます」と西山さん。
買った直後の胸が弾むようなうれしさは、そうして四季を重ねるうちに、しみいるような愛おしさへと変わっていくのでしょう。
PHOTO by Yusuke Nishimura
NO NAME PARISH
ビンテージというマーケット自体が広がっていくことを願っています。限られたコレクターだけではなく、百貨店の家具フロアや家具チェーンに行くような、普通の人にも気軽に見てもらえるようになったらうれしい。「椅子は新しいものがいいけれど、テーブルだけはちょっと面白いからビンテージにしてみようか」といった感じで、初めての方も気負わず楽しんでもらえたらと思います。
by オーナーの西山さん
東京都目黒区柿の木坂1-34−26
Tel. 03-5726 -8985
Fax.03-5726-8986
火〜金 13:00 – 20:00
土日祝 12:00 – 19:00
月曜定休(祝日は営業)