町ぐるみでつくる「箱物」の魅力 〜大川のヒキダシ展を訪ねて

3月22日〜26日まで、代官山T-SITEで『大川のヒキダシ展』が開かれました。「ヒキダシ」をテーマに、大川の家具の魅力を楽しく、わかりやすく伝えた企画展示。内覧会を取材してきましたので、展示の模様とそこから分かった大川家具の魅力を3回にわたってレポートします。

船から家具へ、木工で栄えた町“大川”

「大川」という町をご存じですか。福岡県南西部、有明海にそそぐ筑後川の流域にあるこの町は、古くから家具づくりのさかんな地域です。

今から遡ること、480年。大川の辺りは、筑後川を通る船の中継地として栄えていました。ここに立ち寄る船のメンテナンスをしていたのが、地元の船大工たち。造船や修理で培われた高い木工技術が、大川の家具の原点です。

そんな彼らの技術が家具に活かされるようになったのは、室町時代のこと。将軍の家臣の一族が船大工たちの持つ木工技術に注目し、板を組み合わせてつくる「指物(さしもの)」をつくらせたことから、大川の家具の歴史がはじまります。

家具には、ベッドや椅子などの「脚物」と、タンスや引き出しのような「箱物」がありますが、大川では指物の技術をベースに「箱物」が発達しました。

「大川の家具」は戦後、地元の工業デザイナーの活躍により、一躍、有名になります。昭和40年代には婚礼家具として人気を博したそう。もしかしたら、おじいちゃん、おばあちゃんの家に当時の家具があるかもしれませんね。

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    3月22日〜26日まで開催された「大川のヒキダシ展」

その大川の家具の魅力、そして、自慢の箱物の技術を改めて、今の人にも知ってもらうために開かれたのが「大川のヒキダシ展」です。

職人の技術がもっともよく分かる「ヒキダシ」をテーマに、15の作品が代官山T-SITEのガーデンギャラリーに展示されました。

今回の展示の目玉は、3人のクリエイターと3つの家具工房のコラボによるフラッグシップ作品。各界の売れっ子3名の豊かな発想力と、大川が誇る職人たちの技術力が結びつき、これまで見たことのないような「新しいヒキダシ」が生まれました。

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    (左から)一般社団法人大川インテリア振興センター理事長・土井彌一郎氏、放送作家・小山薫堂氏、桐里工房・稗田氏、メイクアップアーティスト・イガリシノブ氏、木彩工房・小島氏、BEAMS JAPANバイヤー・鈴木修司氏、馬場木工・馬場氏。

ここからは3つの作品を紹介しながら、大川家具の魅力にせまっていきたいと思います。

木だけでも部屋がひとつ、つくれる。

「もし、箱物に人が入ったら?」と大胆な提案をしたのは、小山薫堂さん。

「大川にもゆかりのある寝台列車『七つ星』がヒントになりました。決して広くはない空間で、とても豊かな気持ちになったことを思い出し、オフィス内にもアイディアを練るためにこもれるような場所をつくったらいいんじゃないかと考えました」

スタッフと会議を重ね、できあがったのは『アイディアを生み出すヒキダシ』です。

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    押し入れとヒキダシがくっついたような斬新なかたちも、寝台列車がヒントと聞くと納得。

「日本の建築では、部屋は広ければ広い方がいいとは考えません。たとえば、茶室などは、そのいい例でしょう。豊かさと広さは比例しないんですね。鴨長明が方丈記を書いたのも一丈四方の庵でした」

何ごとにも“ちょうど良い尺”というものを考える日本人の精神性も表現できるのではないかと、人の入れるハコをつくろうと提案しました。

これに応えたのが、大川で三代続く桐里工房。桐ダンスを中心に105年家具をつくり続けてきた老舗です。

人がなかに入って思索を巡らせる箱物という難題でしたが、木を加工することにかけては、どんな要望にも応えられるのが大川の職人。建築につかう技術「校倉造り」を応用し、見事にその構想を実現しました。

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    釘は使わず、互い違いに組んでいく「校倉」方式で、壁部分をつくった。

部屋、でなければ小屋といった印象の『アイディアを生み出すヒキダシ』。

足元の引き出しを踏み台にして、中にはいると手前はたたみ一畳ほどのスペースになっています。その隅がアイディアを練る場所。掘りごたつ形式で、畳の端に座ると、目の前に机があり、原稿用紙が置かれていました。
麻の葉模様の細工で飾られた照明がやさしく机上を照らします。

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    照明に使ったのは伝統工芸の「大川組子」。繊細な細工はまさに匠の技。
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    床は木で畳を再現。へりは色の違う木、表ははつって、いぐさを編んだような見た目と足触りを表現した。

実際に『アイディアを生み出すヒキダシ』の中に入った小山薫堂さんの感想は、

「入った途端に空気が違っていて、別世界に来たような感覚になります。気持ちが引き締まり、アイディアがたくさん降りてくる気がしました」

ヒキダシはすべて桐でできているので、扉をしめると木の香りがほんのり。周囲のざわめきとは隔離されて、頭が冴えてくるような感じがします。
適度な暗さも、集中力アップには持ってこい。木を組んでつくった“校倉式”の壁は隙間なくピッタリとかみ合っているので、一筋も明かりがもれてくることはありません。和紙の貼られた天井だけがぼんやりと明るくなっています。

疲れたら横になることもできるヒキダシ内。長居できるように、壁には特別な材料を使いました。羊毛を桐でサンドした“羊毛桐”です。これは温度調節の機能を高めたオリジナルの複合材。“羊毛桐”のおかげで、夏は涼しく、冬はあたたかく過ごせます。桐を組んでつくった壁は、通気性も抜群。オールシーズン、思索にふけることができます。

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    「校倉造りにすることは職人さんの方からの提案です。持ち運べるのもいいと思いました」

同じ、木で部屋をつくるにしても、もし板で囲んでテープで隙間を塞いだようなものだとしたら、あまりにも無粋です。茶室のような洗練された佇まいだからこそ、いい『アイディアを生み出すヒキダシ』になれるのでしょう。
木だけで部屋をつくれるほどの伝統技術は、日本の文化としてぜひ後世に残していきたいものですね。

続いては、女子の憧れをつめこんだヒキダシと出張時の着こなしをサポートするヒキダシです。

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PHOTO by Yusuke Nishimura / アンティルより支給

大川のヒキダシ展

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会期:2017年3月22日(水)〜26日(日)
会場:代官山T-SITE  GARDEN GALLERY
主催:大川市、一般社団法人大川インテリア振興センター
参加クリエイター:小山薫堂とオレンジ・アンド・パートナーズ、鈴木修司(BEAMS JAPANバイヤー)、イガリシノブ(メイクアップアーティスト)
フラッグシップ作品担当デザイナー:相馬唯
同時開催イベント:クリエイタートークショー&メイクショー、大川職人とつくるミニヒキダシワークショップ

【公式サイト】http://www.okawa-hikidashi.com/

【公式Facebook】https://www.facebook.com/okawanohikidashi/

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