町ぐるみでつくる「箱物」の魅力 〜大川のヒキダシ展を訪ねて

3月22日〜26日まで、代官山T-SITEで『大川のヒキダシ展』が開かれました。「ヒキダシ」をテーマに、大川の家具の魅力を楽しく、わかりやすく伝えた企画展示。内覧会を取材してきましたので、展示の模様とそこから分かった大川家具の魅力を3回にわたってレポートします。

町ぐるみで応えてくれる、おもしろさ。

480年の歴史のなかで磨かれてきた木工技術の高さが自慢の大川。
小山薫堂さん提案のフラッグシップ作品では、その匠の技を随所に見ることができました。

「大川の家具」のもう一つの魅力はひと言で言うなら、産業集積。
町をあげて家具をつくっているので、こんなものをつくりたいと理想を掲げるクリエイターの期待にも応えてくれます。

BEAMSのバイヤー、鈴木修司さんが考えたのは、『一週間のコーディネートを考えるヒキダシ』。半月に一度は出張しているそうで、そんな毎日のなかから生まれたアイディアでした。

「僕は出張に持っていく服のコーディネートを考えるのは好きなのですが、組み合わせを考えるのが苦手な人や億劫に感じる人も多いと思います。そこで、楽しく、効率的にコーディネートが考えられるものができたら、と考えました」

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    扉をあけると7日分のハンガーがかかっており、下に小物をしまう引き出しがついている。

このヒキダシの肝は、中にかかっているオリジナルのハンガー。
3つのハンガーの組み合わせでできていて、自分が着ているようなかたちで見られるのがポイントです。

メインのハンガーが特にユニークで、中心にロープが垂れています。ロープの途中には8つの結び目が。ここに残り2つのハンガーを引っかけられるので、トップスを上の方に、ボトムスを下の方にかければ、ひとつのハンガーで一日のコーディネートが一目瞭然です。
これなら、トップスをかけたまま、「どのズボンを合わせようか」とハンガーをかけかえていけるので、効率よく組み合わせが決められます。
雑誌のスタイリストさんになったような気分で、「視察の日はコレ」「会食はコレ」なんて決めていったら、楽しそう!

その上、このハンガー、便利なだけでなく、デザインにもこだわりがあります。

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    表から見たときに、きれいな長方形に見えるよう、つなぎ目は隠した。

心がけたのは、余計なものを見せないこと。帽子をかけるフックはネジや釘の代わりに木栓でとめ、木の質感だけを見せるようにしました。ロープの継ぎ目も中に隠しているので、どちらを向けてもキレイな長方形の板に見えます。

制作を担当した馬場木工の馬場さんいわく「ハンガーをつくるのがいちばん苦労した」そうですが、デザインにも心を砕いた結果、コーディネートがよく映えるハンガーになりました。

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    「耐荷重までしっかり考えてくれて、重たい冬物も安心してかけられる」と鈴木さん。 

家具をつくるには、材料となる木材はもちろん、レールやフックなど、さまざまな部材が必要になります。大川の町はそういった関連分野も発達しています。
主催の大川インテリア振興センターの方によれば、木材組合だけで60社あり、家具を運ぶ物流や木工用の機械に使われる刃物などの周辺産業まで含めると450社が集まっているそう。
町ぐるみで家具をつくる体制が整っているのが、大川という地域なのです。

家具や生活雑貨を扱うセクションで働いた経験もあり、ご自身も民芸品などに関心をお持ちだという鈴木さんに、バイヤー目線での大川家具の良さを聞くと、こんなふうに答えてくれました。

「大川という町には色んな技術があり、それぞれの技術の平均値が高く、どんな注文でもこなせると聞いていました。実際に、本当に高い水準で期待に応えてくれました」

センスの良さと同時にマーケット感覚が問われるバイヤーから見ても、大川の家具のポテンシャルは高いようです。

大川には木工技術の“ヒキダシ”がある

クリエイターさんの豊かな発想から生まれた、従来の引き出しとは違う、斬新なヒキダシたち。最後にご紹介するのは、イガリシノブさんが考えた『かわいいをつくるヒキダシ』です。

「メイクショーなどで、目をキラキラさせた女の子と話していると、たくさんのメイク道具に囲まれることは、女子の憧れなんだと実感します。そうした女子の憧れをつめこんだヒキダシを考えました。メイクボックスのなかに入り込んだような気持ちで楽しんでください」

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    杉でつくった縦ストライプと、四隅をとめるオリジナルの丸い木ネジがかわいい。
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    いろんな方向に出せる引き出しの上には、メイク道具があふれんばかり!

このヒキダシを担当したのはフルオーダーの家具を手がける木彩工房の小島さん。“かわいい”を表現したいというイガリシノブさんの意図を汲み、隅々まで工夫を凝らしました。
ぺたんと座ってメイクする、女子ならではのルーズさも表現したいというイガリシノブさんの発案を受け、鏡の下は開閉式に。フタを開くと足を伸ばすことができます。
鏡の前に座ると、ちょうど全体が写りこむ位置に、クチビル模様が!

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    鏡の前に座って、見上げると、イガリシノブさんが書いたクチビルの絵。

「引き出しの中など、一部は表面をわざと荒く仕上げました。こうすると、引き出しを開けたときに、ふわっと杉の香りがします」

イガリシノブさんのイメージした世界観を活かし、『かわいいをつくるヒキダシ』が誕生しました。

既にある家具だけでなく、こんなふうに見たこともない家具もつくれるというのはおもしろいですよね。

『大川のヒキダシ展』では、3つのフラッグシップ作品のほかにも、いくつかの展示品がありました。最後は、その作品を一部ご紹介しながら、家具について考えてみたいと思います。

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PHOTO by Yusuke Nishimura / アンティルより支給

大川のヒキダシ展

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会期:2017年3月22日(水)〜26日(日)
会場:代官山T-SITE  GARDEN GALLERY
主催:大川市、一般社団法人大川インテリア振興センター
参加クリエイター:小山薫堂とオレンジ・アンド・パートナーズ、鈴木修司(BEAMS JAPANバイヤー)、イガリシノブ(メイクアップアーティスト)
フラッグシップ作品担当デザイナー:相馬唯
同時開催イベント:クリエイタートークショー&メイクショー、大川職人とつくるミニヒキダシワークショップ

【公式サイト】http://www.okawa-hikidashi.com/

【公式Facebook】https://www.facebook.com/okawanohikidashi/

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