モノづくり大国、日本。ほぼすべての地域にモノづくりの現場があり、こうしている今も、多くの職人たちが、自らが磨いた技を用い、たくさんのモノを生み出していきます。
しかし時代はそれを是としません。大量生産・大量消費、スピード社会の波が、多くの職人たちを苦境に立たせています。それを「自然淘汰」と割り切るか、もしくは抗いを見せるのか。
その狭間で1つのライフスタイルを提案していく男性がいます。
縮小しゆく全国のモノづくりを応援するために
「週末、小さなコト始め」と副題がついた「にっぽん てならい堂」のホームページ。カート機能やピックアップされたアイテム、検索機能などがあり、一見、一般的なオンラインショップサイトのようです。しかし、そうでもない部分もちらほら。よく見ると、1つ1つの商品には、【日程】が添えられ、さらに、<新潟県燕市>などの【地名】も記されているのです。
「私たち『にっぽん てならい堂』は、ものづくりを体感するセレクトショップ。売っているのは、モノではなく、ワークショップや工場見学など、“体験”を売っています」
そう話すのは、代表の中村さん。ネット通販サイトに携わる前職を辞め、現在にっぽん てならい堂の運営を手がけ、全国を飛び回っています。
「ネット通販の仕事をしている中で、たくさんの全国の作り手さんと知り合ったんです。そして彼らのモノづくりを見たり、思いを聞いたりする中で、日本のモノづくりってやっぱりとても素晴らしいものであり、これからも続いていくべきものだと強く感じました」
時代的な背景もあり、縮小傾向にある地場産業や伝統工芸などの全国のモノづくり現場。彼らを応援したいと決心した中村さんは、「何をされるのが1番うれしいのか?」と、作り手に対して直接、聞いてまわったそうです。
「彼らが望んでいたのは、『人に来てもらいたい』ということ。もちろん、自身の商品が売れることも大事なんですけど、それ以上に、業界や地域のことを考えているんです。それが彼らのことを応援したいと思ったきっかけですね」
そんな思いからスタートさせたのが、セレクトショップ「にっぽん てならい堂」でした。しかし、早さや安さだけを突き詰めていく現在のネットショップの潮流に対して、中村さんはある種の物足りなさと頭打ち感を抱いていたそうです。
「一般的なネットショップをやっても、アマゾンや楽天に勝つことは絶対にできないので、それらの大手ショッピングモールサイトと戦わずにすむ方法がないかを考えました。
そこで行き着いた答えが『届けない』というやり方。『商品を取りに行くネットショップ』です。『シュールすぎない?』『誰がとりにいくの?』なんて声もありましたけどね(笑) 」
PHOTO by Kaori Nozaki / てならい堂より支給