「和家具」と聞いてイメージするのは、どんな感じ? 桐をふんだんに使ったもの? 黒い装飾の金具がついている? 多くの人にとっては、いわゆる“嫁入り道具”のような豪勢なものかもしれません。しかし、『OTSU FURNITURE』で扱っているのは、もっと庶民の生活を感じさせる、どこか懐かしいアイテムばかりです。
当時の職人の意匠を受け継いで、また繋いでいく。
OTSU FURNITUREが取り揃えるのは、明治から昭和初期にかけて、一般家庭で使われていた家具や道具、小物たち。古いものなので、仕入れの段階では、当然まだ販売できるほどの状態ではありません。それでも、そのモノのもつ魅力を現代に伝えるために、自社で手を加えて使用に耐え得るように蘇らせているそうです。
「この時代の家具は過度な装飾もなく、素朴でシンプルなデザインが特徴です。そして当時のものは特注でつくられているものも多く、素材もつくりも、とてもしっかりとしています。いま同じものを職人さんにつくってもらうとすると、かなり高額になる。だからこそ、僕たちが現代までなんとか残ってきた家具たちに、新たな活躍の場を与えてあげたいと思っています。
そのために、仕入れた家具は自社で、洗浄と直しを行います。実際、この店舗にも作業場があって、私を含めて3人で修理を担当。全員がカンナを扱えて、ときにはガラスの切り出しから張り替えまでをやっています。それを経てようやく日の目を見ることができるんですよね。つくられてから100年くらい経っているものなので、それによって出る“味”を活かす、丁寧な作業を心がけています」
実物を目にすると、確かにどれも意匠を凝らした家具ばかり。素材も主に無垢材だというから、モノの良さは一級品です。今の量産品にはない、取っ手や各所の細かい職人技も注目に値します。
和室でないとマッチしない、なんてことはない。
家具や食器、置物、はたまた農具に至るまで、バラエティに富んだラインナップの店内はまるでギャラリーのよう。目黒通りでは唯一の日本家具を専門に扱うこのショップは、他のお店では出合えない貴重なアイテムの宝庫です。その中でも人気の商品はどういったモノなのでしょうか。それは誰でも目にしたことがあるであろう、あのアイテムでした。
「1番の売れ筋は『ちゃぶ台』です。意外と思われるかもしれませんが、若い女性の方にご購入いただくことが増えてきました。二人暮らしで使うにはちょうどいい70㎝ 〜 100㎝くらいのサイズが人気。ちゃぶ台って脚がキレイに折りたためて、使う時以外はしまっておけるので空間を広くする優れものです。ザ・和風な見た目も、ちょこんと立てかけられている姿もどこか愛らしさがありますよね。それに当時はどの家庭にもあった机なので、サイズや色味、形もさまざま。しかも経年変化をしているので、ひとつとして同じものはありません。
当店の商品だけで空間をつくりあげてしまうと、ものすごい和風なお部屋になる。だから、まずは何か1アイテムを取り入れてみるのがオススメです。こういった家具は和室にしか合わないと思われがちですが、フローリングにも違和感なくマッチします。場所を選ぶことなく使えるのもポイントなんですよ」
現代において、ちゃぶ台と同じ用途で使われているローテーブルは、本や小物を置けるちょっとした収納がついていて、折りたたむことができないモノがほとんど。そういった側面からも、実用的であり、量販店では得られない独自性も兼ね揃えているちゃぶ台が人気なのもうなずけます。それにいち早く気がついた人たちが、今インテリアとして取り入れはじめているのかもしれません。
住宅から和室がどんどん減ってきている現在。今回、お話を聞いて気付づかされたのは「和室のためにつくられた訳ではない」ということです。今だって背の低いテーブルがあるように、その家具のもつ本質的な用途は、変わっていません。どれだけ西洋文化が主流になっても、ちゃぶ台=ローテーブルですし、タンス=キャビネットになっただけのこと。だとしたら、あえて、リアルな和モダンのテイストを選ぶのも面白いかもしれませんよ。
PHOTO by Yusuke Nishimura
OTSU FURNITURE
家具に関しては、実用性もあるのでわかりやすいご提案ができると思います。ただ、当店で扱う小物や道具はちょっとクセが強いので、その魅力をもっと感じてもらえるような空間にしていきたいですね。骨董品というと、ちょっと手が出しづらいかもしれませんが、空間にアクセントをつけるオーナメントとして、もっと気軽に楽しんでもらいたいですね。
by 店長の霞さん(写真:右)
〒152-0004 東京都目黒区鷹番1-4-9
TEL:03-3794-7883
営業時間: 11:00 〜 20:00
定休日: 年末年始のみ
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