vol.08 愛用品その3【ダイアリー(デルフォニックス)】2/3

渋谷、恵比寿、吉祥寺、丸の内、横浜、二子玉川……。

大の文房具好きである編集長・雨森は、デルフォニックスの直営店である「DELFONICS」、「Smith」がある街に行くたびに、ほしいものがあろうとなかろうと絶対に足を運び、どれだけ忙しい時でも、30分ちかくの時間をそこで過ごすのがマイルールとなっています。そもそも最初の出会いは、当時まだ地元の大阪にいた雨森少年(いや、すでにガッツリ青年)が、東京出張に来た時に買った1冊の手帳。そこからリフィルを交換し続けて、10年以上の月が流れています。

今では、ノートにペン、その他の雑貨、友人へのプレゼントなど、気づけば身の回りはSmithで買ったものばかり。それらの商品を企画・販売しているスタッフの方々との対談ということで、テンションが上がりきった挙げ句、今回なんと、自身の理想の手帳の形をプレゼンをするという大胆な行動に出てしまいます!

そんな“暴挙”に対し、終始こころよく、笑顔でお付き合いいただいたのは、広報の和田千波さん、商品企画やMDなど幅広く携わる黒本和美さん、デザイナーの宮下瞳子さんの3名。女性の訪問に、編集部がいつになく華やかな空気に包まれました!

(取材日:2019.06.24)

Theme 2「ロルバーン。見直し続けて、多くに愛される存在に」

【2-1】“手帳ばなれ”が叫ばれる中で……。

雨森:やはり、定番のシリーズといえば、ロルバーンやビュローあたりですか?

和田:そうですね。ロルバーンは2021年で発売されてから20年になります。ビュローは15年ほどです。

雨森:一番売れているのも、その辺りですか?

黒本:数が出るのはロルバーンですね。SNSでも、たくさん話題にしていただいています。

宮下:ロルバーンは、カフェに行くと必ず1人くらいは持っている人がいますね。

雨森:それって、何が評価されたが故に、ここまで愛されているんでしょう。

黒本:ロルバーンに関しては、仕様すべてじゃないでしょうか。硬めの表紙と裏表紙、クリーム色の紙、クリアポケットとミシン目、ゴムバンドとリング……そのすべてですよね。そしてコストパフォーマンスも高い。

和田:あと、あまり知られていませんが、ロルバーンは国産なんですよ。

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    大切なのは、書き味。ちなみに、こちらも10年来の御用達、パーカーのシャーペンもSmithで。

雨森:確かにノートを買う時に、若い頃だと、値段とか表紙のデザインだけで選ぶんですが、大人になると書き心地がとても大切になるんですよね。自分が普段つかっているペンとの相性というか、馴染み方というか。そこがうまくいかないと、めちゃめちゃテンションが下がっちゃう。僕の場合、シャーペンの芯の先の部分をちょうどよい角度にして、ちょうどよい太さで書けるように、調整するんですけど、それが安い紙だと意外と叶わなくて。プロのみなさんに対して、いっちょ前なことは言えないですけど。

黒本:いやいや、わかります!

雨森:そういった書き味みたいなものにこだわっているうちに、この手帳から離れられなくなって。気づけばリフィルを変え続けて10年くらいかな? もしこれが廃盤になっちゃったら、どうしよう。路頭に迷っちゃう……。

宮下:そのときには、早めにお知らせしますよ(笑)

雨森:手帳って日付けが毎年ちがうから、無くなる前に一生分を買う、みたいなこともできないし……(笑)。このリフィル、どうですか? 売れています??

黒本:そうですね。この『ダイアリー+メモ』には長い歴史があるんですよ。以前は『マンスリー+メモ』という名前で、今はウィークリーのページがありますけど、マンスリーだけだった時代もあったんです。

雨森:てことは、全部で20ページくらいですか?

黒本:そうですね。当時の担当者が言うには、「時代に対して早かった」と。つまり、あまり売れませんでした(苦笑)。今は薄いものが人気ですけどね。そこから、ウィークリータイプにしたんです。その結果、ページ数が増えて、B6サイズだと重くなってしまい、規格サイズではなく、B6とA6の間のサイズになりました。

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    余白を活かして、付箋をペタペタ。使いやすくするために、自分なりの工夫ができるのも、いいところ。

雨森:なるほど。歴史がありますね。他にこだわりなどはありますか?

黒本:このタイプも、紙の色が真っ白ではなくてクリーム色ですね。目に優しいものになっています。この“白すぎない”っていうのは、もともと手帳を作り始めた佐藤のこだわりです。あとは余白の美、ですよね。

雨森:名言、いただきました!「余白の美」。天地や左右の部分ですよね。

黒本:そうですね。余白の部分が、キレイにデザインされている。

宮下:他のメーカーさんだと、紙のいっぱいいっぱいまで、要素が配置されていることが多いんです。「1月」とか「2月」とかが、紙の端っこのところにレイアウトされていたり。デルフォニックスの場合は、ゆったりとデザインされていますね。

雨森:確かにそうですね。その余白部分を活かして、僕も付箋をはったり、To doを管理したりしています。ただやはり“手帳ばなれ”みたいなことは聞きますよね。僕の場合は、アナログの手帳とグーグルカレンダーのダブルで使っていますが。売上的にも落ち込んでいたりするんですか?

黒本:正直、ありますね。時代的には、薄いものや、ノートを手帳として使う、みたいな方向にシフトしています。

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    神は細部に宿る。同じように見えて、小さな工夫が、随所に見られます。

【2-2】「デザイン」と「機能」の間で、行ったり来たり……

雨森:手帳のデザインって、ステーショナリーの中でも、花形ではないですか? 僕はすごい憧れますね。手帳、すごく好きなので。もう何年も前ですが、ほぼ日手帳が大ブレイクしたように、どういったものが最適解なのかを考えるのって、すごく面白いと思うんです。

黒本:そうですね。ロルバーンダイアリーは12年ほど前に、私も制作に関わりました。できるだけシンプルで使いやすいものを目指して、イヤーカレンダーとマンスリー、たっぷりの方眼メモという仕様になったんです。

雨森:そうなんですね! いま思い出しましたけど、僕が幼い頃に、『システム手帳ブーム』みたいなのがあったんですよね。僕、小さい頃にピアノを習っていたんですけど、その先生がやたら分厚いシステム手帳を持っていて。それが大人の象徴というか、すごくかっこよく見えて、憧れていました。でも、時代的には、薄く、シンプルになっていってるんですね……。

和田:そうなんです。例えばホチキスとじのノートタイプのロルバーンに、マンスリーがついているものなどが人気ですね。

雨森:なるほど。ノートとかメモ帳のうちの一部分が、手帳的な機能を持っているというか。

和田:あと、2019年から登場したのがこれですね。ガントチャート付きで、より機能的なタイプです。

雨森:あ、これ! これ、いいわ〜。

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    ガントチャート式は、まさに雨森向け。
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    過去に撮影した画像。案件ごとに、これだけ複雑になるスケジュールを管理しています。

黒本:複数の案件を同時進行している方だと、いいですよね。

雨森:それ、まさに僕ですね。これだ、僕、これがほしかった! ただ、これだけ長きにわたって手帳をつくっていれば、デザイン的な完成形が生まれそうな気がします。いつまでも、改善の余地みたいなものがあるんですか?

黒本:それがですね、実は微妙に変えつづけているんですよ。たとえば昔は、曜日の表記に日本語はなかったんですね。「ロルバーン」はドイツ語なので、中面もすべてドイツ語で表記していて。ただ日本でドイツ語を読める方は多くないので、途中から日本語を入れました。

宮下:色も変わりましたよね。昔は“おしゃれ推し”で、「日曜日だからって赤とか、ないでしょ」みたいな(笑)。ブルーとグレーでしたよね。

雨森:機能性より、デザイン性を重視していたんですね。

黒本:でも、自分たちでも「見づらい!」ってなってきて、一回、赤にしてみたら「すごく見やすいじゃん、これ!」って(笑)。さらに、その後に入れたのが「大安」とか「友引」などの六曜です。ここも毎年、少し小さくしたり、大きくしたり……。見直しを続けているんです。

雨森:確かにデルフォニックスの商品を持つ人たちって、ある程度、デザインに意識的な層だと思います。もちろん使いにくいのはダメですけど、だからといって機能の方に振り切って、例えば「父の日」ってドカーン! と大きく書かれていても、ファンは悲しむというか。

宮下:そうですね。あと、祝祭日を英語で表記する案もあったんですけど、人気商品になった以上、使ってくださる方のことも考えていきたくて。それに英語だと分からないものもありますし。「勤労感謝の日」とか、英語だと分からない(笑)

雨森:あ、そうか。絶対に分からないですね。

黒本:それと「日本語でもかっこよくできるのが、デザイナーだろ?」とも言われます。そう言われてしまうと……「あ、はい」って(笑)

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    紆余曲折を経て、現在は祝祭日や六曜の表記も日本語に。

雨森:まあ「ただ英語にすればかっこいい」っていう考え方が、すでにかっこよくないですよね。つまり、みなさんは手帳のデザインも担当しているんですか?

宮下:やっていますね。

雨森:わ! やっぱり今日、すごい人がここに来てるんだ!!(笑)

宮下:さきほど、商品名もデザイナーが考えるっていう話がありましたが、それで言うと、手帳のネーミングがいちばん大変なんです。一度に何十もの商品が出るので。

雨森:その一つ一つに名前があるんですか?

宮下:はい。もう大変で。形状に特徴があるものであれば、それを名前にしてあげればいいんですけど、そうじゃないものもあるので。

雨森:その場合、どうやって名前をつけるんですか?

宮下:イメージするしかないですよね。「これは『○○○○』っていう名前の人が持っていそう」とか。あとは地名とか国の名前とか……。たとえば『ラベンナ』はイタリアの地名。『コンソナント』は、アルファベットの「子音」です。『クレイグ』は人名で、『リネン』は素材名ですね。

雨森:確かにそれは大変ですね。答えがない世界というか……。

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    たくさんの商品をご用意いただいて……
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    思わずこんな表情に!

(つづく)

手帳 2020/ロルバーンダイアリー クラスタM

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本革のような高級感あふれるロルバーンダイアリー(2020年版/2019年10月始まり手帳)

「シンプルで飽きのこないデザイン」と「使いやすさ」で、リングメモやノートでも定番人気のロルバーンダイアリー。本革を思わせる質感の新作が登場しました。

シボ感のある合成皮革を使い、高級感たっぷりの佇まい。カラーバリエーションは、レッド、ダークブラウン、ブラックで、こっくりとした深い色合いがラインナップ。中面はマンスリーページと、書き込みの多い方にも嬉しい125ページの方眼メモ付き。インクのにじみと裏写りを抑えたクリーム色の上質紙です。

¥1,430(税込)

DELFONICS(デルフォニックス)

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1本のペンと1枚の紙から生まれる文化は、無限大です。
つまり文具は道具であると同時に文化の入り口でもある。
私たちが作る文具は、実用的であるだけでなく、
使う人の感性や創造力を自由にするものでありたいと、考えます。

デルフォニックス公式サイト:http://www.delfonics.com/

デルフォニックスWEB SHOP:https://shop.delfonics.com/