vol.04 愛用品その2【+d(アッシュコンセプト)】1/3

もう5年以上に渡って、自宅の洗面所のコップを小さなからだで支えてきた『KOBITO』。2019年に発売された『Remococo』は、キッチンと、仕事用デスクの上の棚に2つ。お風呂を洗う時は、過去にリノスタでも紹介したtidyの『Handy Sponge』と『PlaTawa for Bath』で。会社のデスクには、日々、大量に送られてくる封書を開けてくれる『Birdie Paper Knife』……。
雨森の愛用品として、自宅とオフィスに、かずかずの商品が置かれている『+d』。そして、その商品を世に送り出しているのが、『h concept(アッシュコンセプト)』です。みなさんも、蔵前やKITTEにある直営店、『KONCENT』に行ったこと、あるんじゃないですか?

そして今回、我々からの取材の依頼を快諾していただき、登場していただいたのが、広報を担当する……と思いきや、なんと名児耶社長! 日本のデザイン界における重鎮的存在です。よくぞ、この狭苦しいオフィスまで……。本当にありがたい! 取材が始まると、とってもお茶目で、サービス精神旺盛、お話好きの名児耶社長。その経歴となる、ムサ美から高島屋の宣伝部へ、そしてご実家の仕事をデザインのチカラで拡大させ……みたいな話も、たっぷりと語ってもらったのですが、それは他のサイトでも読めるので、そっちを参照してもらうとして(爆)、現在のアッシュコンセプトの本質的な部分に迫る話だけを抽出して、お届けしたいと思います。

実際のインタビューでは、到底、記事には書けないような「〇〇で〇〇な話」とか、「△△が□□した話」などを含めて、すべてのデザインに携わる人に向けた、ありがたいお言葉をたくさん、いただきました。いやほんと、名言が出るわ出るわで、大盛り上がり。あぁもう、ほんと読者の方々にも、編集なしでぜんぶ聞かせてあげたかった! だってお話、面白すぎるんだから!!!

(取材日:2019.06.11)

Theme 1「世界も認めるジャパニーズデザインに魅せられて」

【1-1】デザイナーの匿名性が尊ばれた結果……

雨森:アッシュコンセプトの創立から17年ほどが経ちます。元々はどういった思いから、立ち上げた会社なのですか?

名児耶社長(以下:名):僕は当時から日本のデザインの素晴らしさを強く感じていました。日本のデザインって、見た目のよさだけではなくて、技術的な調整がされていて、使う人のことを徹底的に考えられたものばかり。ほしいものが素直にカタチになっているんですね。たとえば、かつてイタリアには『メンフィス』というデザイン集団がいました。彼らは確かに、80年代に世界のデザインに大きな影響をあたえたけれど、やはり見せるためであり、アピールするためのデザインでしかなかったから。

雨森:そういったジャパニーズデザインの強みや独自性は、世界的にも評価されているんですか?

名:そうだね。例えば、デンマークをはじめとしたスカンジナビアデザインが世界的な評価を受けて久しいけれど、彼らのベースにあるのは、日本の文化なんです。みんなが「日本のデザインを勉強した」と言っていますから。それくらい、日本のデザインの質は高い。ただ残念なことに、日本人がそれに気づいていないんだよね。たとえば「Less is More」なんて概念が大層に叫ばれているけど、そんなの日本ではずっと前から当たり前でしょ? 枯山水の敷き砂を考えてください。あと「わびさび」って言葉なんかも、すごくいいよね。

雨森:なるほど。でも確かに「日本が世界に誇れるもの」と聞かれたとしても、一般的に言って「デザイン」とは答えないかも……。

名:その理由の一つはね、“匿名性”が尊ばれた歴史があるから。たとえば「こけし」をデザインした人、知っていますか? 誰も知らないでしょ? いま深澤直人さんが館長を務めている日本民藝館に行ってみてください。「作者不明」と書かれたものばかりだから(笑)

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    “のっけ”から、深〜い話。これは聞く側も気が抜けないぞ!
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    雨森のデスクはモノが少ないにも関わらず、『Birdie Paper Knife』は常に手の届く所に。

雨森:そうか……。日本人は、自分たちの先人が生み出した優れたデザインに気づけていないんですね。

名:うん。日本は石油などの資源もぜんぜんとれないけど、デザインという資源は、もう、わんさかあるんだから。これだけ美術系の大学がたくさんあって、いまは一般大学にもデザイン学科がある。デザインの種がいっぱいあるよね。

雨森:そう言われてみれば、そうかも知れません。実は身近にデザインはあるんですね。ただ、個人にフォーカスが当たらない。

名:最近の例で言っても、トヨタのプリウスが誰のデザインなのか、知っている人、いないですよね? Gマーク(=グッドデザイン賞)のサイトを見ると、いちおうクレジットされていますが、「デザイン部」と書かれているだけで、個人の名前はないんです。もちろん、デザインは1人でできるものではなくて、コミュニケーションの中から生まれるもの。でもやはり、ゼロからイチの発想の元を生み出すのが、デザイナーのクリエイションの本質だし、その人たちにもっと、スポットが当たるべきなんです。

雨森:そういった現状への違和感から、アッシュコンセプトを立ち上げたんですね。

名:そうですね。誰もやらないから、もう自分でやるしかないと思って。前職でも、もっとデザイナーをフィーチャーしたかったんですが、それを許さないのが、当時の日本だったんです。

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    序盤ながら、もうかなり白熱していますよ!

【1-2】売れない商品なんて、ない。

雨森:では、「+d」の商品に、デザイナーの紹介が必ず添えられているのは、そういう意向があってのことですか?

名:うん。それで何が変わるかは分からなかったけれど、デザイナーの名刺代わりにはなるよね。“代表作”があるっていうのは、嬉しいものです。また僕たちは、デザイナーの思いをカタチにして、日本だけでなく世界に届けたいという思いが強かった。カタチになった商品だけでなく、そのバックストーリーですよね。どういうことを考えた結果、このプロダクトが出来上がったのか。そういった、商品の裏側にある“思い”を世界中に届けてあげたい。それをやりたくて、アッシュコンセプトをつくったんです。

雨森:名前を出すと、デザイナーの責任感も増しますよね。実力、そして本気度みたいなものが試されると言うか。

名:そうですね。中途半端な仕事はできなくなるから。それに我々は、デザイナーがつくって販売の契約をすれば終わりではなくて、売れた分だけ、デザイナーに還元しています。だから、デザイナーも売れるために頑張る。もちろん、我々も売るために頑張る。

雨森:win-winのモノづくりができると。とは言っても、このご時世にすべての商品がヒットするのは難しいのではないですか?

名:いや、そもそも僕は、「売れない商品なんて、ない」と思っています。「売れない」んじゃなくて「伝わっていない」だけ。ここが大事だね。でも、ジャンルを問わず、例えば百貨店の店員に「これはどんな素材でつくられていますか?」と聞くと「メーカーに確認してみます」と返ってくる。これではダメですね。だから我々は、蔵前を皮切りに、自分たちのショップを持ちました。そこで、自分たちできちんと伝えるようにする。「本当に売りたい」と思って、提案する。するとね、絶対に売れます。売れなかったことなんか、ないから。

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    自宅のお風呂。おしゃれでもなんでもなくて、すいません。ちなみにぶら下げるために使っているtidyの「S HOOK」もアッシュコンセプトプロデュースのアイテムですね。
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    あ! 授業を聞くときの顔になってる!!

雨森:なるほど。「売れない」のは「伝わってない」から……。

名:そう。我々はデザイナーと一緒に商品をつくって、それを売るところまで、きちんとデザインしたいと思っている。だからこそ、自分たちがショップで売るための勉強をして、さらに応援してくれている小売店にもそれを提案しています。「この商品は、こういう売り方でいきましょう!」みたいな感じですね。やはり今の時代は、そこまでやらないとダメなんです。これだけモノが溢れている中で、絶対に必要な行動はなにかをきちんと考えないといけない。

雨森:現在は、デザイナーとタッグを組むことで商品を生み出して販売するだけでなく、自社でショップを構え、さらに地方の地場産業とのコラボや、メーカーのデザインコンサルティングなども行っています。最初から、そういった構想があったんですか?

名:いや、そこまでは思い描いていなかったんですよ。ただ、会社をつくってすぐに、外部から「うちのデザインも見てほしい」って言われるようになって。「えっ、他の会社のデザインなんか、やっていいの?」とか思いながら(笑)、コンサルティングもするようになりました。でも僕たちがやっているコンサルティングっていうのは、いわゆる「経営コンサルティング」と呼ばれるようなものとは違います。我々は自分たち自身でモノづくりを行い、ショップを構え、在庫もして、世界に輸出もしている。その経験の中で培ったことだけをアドバイスするというルールを守っています。リスクを背負わずに「口だけだす」みたいなコンサルってあるでしょ? あんな責任感のないことはできませんよ。

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    実は、広報の戸村さん(右)も、名児耶社長と一緒に、いらっしゃいました!

(つづく)

Neko Cup

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ネコが世界を癒します。

カップ型のネコが、砂や土のネコシルエットを無限にうみ出します。
海辺や砂場、雪の日に。
家の中ではオブジェとして。

地球環境の未来を考えたバイオマスプラスチック製で、素材の半分は竹とホタテの貝殻などの有機物からできています。 

¥2,916(税込)

h concept(アッシュコンセプト)

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モノを創る人と造る人を、そしてモノを使う人を、大切にしていきたい。
モノづくりを通して世の中を元気にする会社です。

アッシュコンセプト公式サイト:http://h-concept.jp/