vol.06 愛用品その2【+d(アッシュコンセプト)】3/3

もう5年以上に渡って、自宅の洗面所のコップを小さなからだで支えてきた『KOBITO』。2019年に発売された『Remococo』は、キッチンと、仕事用デスクの上の棚に2つ。お風呂を洗う時は、過去にリノスタでも紹介したtidyの『Handy Sponge』と『PlaTawa for Bath』で。会社のデスクには、日々、大量に送られてくる封書を開けてくれる『Birdie Paper Knife』……。
雨森の愛用品として、自宅とオフィスに、かずかずの商品が置かれている『+d』。そして、その商品を世に送り出しているのが、『h concept(アッシュコンセプト)』です。みなさんも、蔵前やKITTEにある直営店、『KONCENT』に行ったこと、あるんじゃないですか?

そして今回、我々からの取材の依頼を快諾していただき、登場していただいたのが、広報を担当する……と思いきや、なんと名児耶社長! 日本のデザイン界における重鎮的存在です。よくぞ、この狭苦しいオフィスまで……。本当にありがたい! 取材が始まると、とってもお茶目で、サービス精神旺盛、お話好きの名児耶社長。その経歴となる、ムサ美から高島屋の宣伝部へ、そしてご実家の仕事をデザインのチカラで拡大させ……みたいな話も、たっぷりと語ってもらったのですが、それは他のサイトでも読めるので、そっちを参照してもらうとして(爆)、現在のアッシュコンセプトの本質的な部分に迫る話だけを抽出して、お届けしたいと思います。

実際のインタビューでは、到底、記事には書けないような「〇〇で〇〇な話」とか、「△△が□□した話」などを含めて、すべてのデザインに携わる人に向けた、ありがたいお言葉をたくさん、いただきました。いやほんと、名言が出るわ出るわで、大盛り上がり。あぁもう、ほんと読者の方々にも、編集なしでぜんぶ聞かせてあげたかった! だってお話、面白すぎるんだから!!!

(取材日:2019.06.11)

Theme 3「これからも、たくさんの人と、マジメに遊ぶために」

【3-1】無理をせず、デザインと向き合う。

雨森:これは変な質問かもしれないですが、もちろん一企業の経営者として、採算も考えて、売れると思ったものをリリースしているんですよね?

名:それはね、僕には優秀なスタッフがいるから。多少、僕が利益を度外視で考えても大丈夫なんです。

雨森:なるほど。では、名児耶さん自身は、売れるかどうかより、プロダクトが持つストーリーや、情緒的な価値に重きを置いているんですね。

名:まぁ、そう言い切りたいんだけどね。とはいえ、実家が商売をやっていたこともあって、根の部分では、やっぱり商人としての感覚もありますよ。あと僕が大切にしているのは、みんなが潤うということ。安く売られているものは、どこかに無理が生じていることが多いから。生産工場にリピート発注が行った時に「これ以上、つくりたくないな」って思われているようじゃダメ。でもそんなことはよく起こっているんですよ。

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    自宅のデスク。壁につけた棚に『Remococo』が。ちなみにキッチンにも『Remococo』を使っています。
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    大切なのは、バックストーリー。お話を聞く中で、痛感しました。

雨森:では、スタッフによく伝えることはありますか?

名:僕がいうのは3つだけ。1つ目は「人を殺すな」ってこと。これはそのままですね。そして2つ目は「嘘はつくな」ってこと。一度嘘をついてしまうと、その周りをどんどんと次の嘘でかためていかなくてはいけなくなる。そうなると、信頼関係もなくなっちゃうから。僕たちは人とつながることで出来上がるコミュニケーションの力でモノをつくっています。その時に大事なのは、やっぱり嘘をつかないことですね。

雨森:デザイナーと二人三脚でモノづくりを行い、販売店とのコミュニケーションも大切にしているとおっしゃっていましたもんね。

名:そして最後に、「その2つを守った上で、やんちゃをやれ」ってことです。僕たちはデザインやモノづくりが大好きでこの仕事をやっています。だから、あまり無理をしたり、肩に力が入ったりしてしまうと、楽しくなくなるし、好きじゃなくなっちゃう。誰だって、生きるために息をするでしょ? 空気を吸うのに、無理をしていますか? それと同じくらいの感覚で、デザインに向き合いたいですね。

雨森:なるほど。恋人の前で、無理をしちゃうのはよくありません。自然体がいちばんってことですね。

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    盛り上がりすぎ!

【3-2】次なるメイド・イン・ジャパンに向けて……

雨森:最後にする質問ではないかも知れませんが、「アッシュコンセプト」の「h」は、何の「h」なんですか?

名:これはね、「Happy」でもあり「Hello」でもあり「HaHaHa」でもあり……。たくさんの言葉が入っています。一般的に言って、会社をつくる時に強く思うのが「利益のため」という気持ちですよね? でもそれは手段であって、目標ではないはずなんです。本当の目標は、みんながHappyになるということ。そんな会社にしたいし、縁があった人にもHappyになってほしい。そう思ったので、そのコンセプトを忘れないように社名にしたんです。

雨森:なるほど。でもまさに名児耶さんご自身が、「Happy」や「Hello」、「HaHaHa」を体現していますね。

名:ハハハハ! 人生は1度しかないからね。楽しまないと!!

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    常におだやかで、お茶目な表情が、たまりません。
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    と思ったら、急に強いまなざしを向けてくる。カッコいい!

雨森:では、これからの日本のモノづくりにおいて、思うことはありますか?

名:そうだね。昔の「メイド・イン・ジャパン」と言ったら、まずは“技術型”。「早くて安全な新幹線」というようなイメージですね。その後、粗悪品が増えて、ISOなどで品質が高められていった。それが次のメイド・イン・ジャパン。そして現在は、クリエイションが入っているモノづくりでないと、もはやメイド・イン・チャイナには勝てない状況になっている。

雨森:ずっとお話にあった、デザイナーの思いや、商品の裏側にあるストーリーなどですね。

名:そう。技術力や品質は、もはやあって当たり前。その上に感性やクリエイションが必要なんです。今の消費者がモノを購入するきっかけになるのは3つあると思っていて、それは「理性」と「感性」、そして「知性」です。理性というのは、品質や価格。そして感性は、デザインや色、触感などですね。そこにさらに、知性がないと売れない。それが、なぜこれが作られたのか、どんな思いが乗っているのか、そういったバックストーリーが伝わると、納得して買ってもらえます。

雨森:なるほど。その価値を引き出して、見える化し、商品としてカタチにするのが、御社の役割なんですね。

名:そうだね。やっぱり、そのストーリーというのは、自分自身ではなかなか気づきにくいものだから。特にアーティスティックな感性を持っている人は、客観的になるのが苦手なことが多い。だから、外部から手を差し伸べないと、メイド・イン・ジャパンはよくなっていかないですよ。そうやって行動を起こし続けて、僕たちと遊びたいと思う人に、どれだけ遊びに来てもらえるか。それを考えています。これからも、たくさんの人と、マジメに遊びたいなと思いますね。

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    お二人とも、楽しい時間を、本当にありがとうございました!

(おわり)

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Writer's Voice

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冒頭にも書きましたが、まさか名児耶社長ご本人が取材に応じてくれるとは……。本当に驚いたと同時に、とてもありがたい時間をいただきました。取材の中で、たとえばnendoの佐藤オオキさんが頭角を現しはじめたころのエピソードや、誰もが知っているビッグブランドに関する裏話など、名児耶さんでなければ出てこないお話がボロボロと出てきます。誰もが認めるすごい功績を残している方なのに、決して飾らない人柄。さらにブランドのファンになりました!!

アッシュコンセプト公式サイト:http://h-concept.jp/