
雪を初めて見た日のことを、もう忘れてしまった。
そのとき私はどう思ったのかなぁ。
今住んでいるところは、冬はだいたい晴れている。
雪が積もることはめったになくて、この間7年ぶりに雪が積もった。
4歳の子にとっては初めての積雪。
葉がすっかり落ちた木々にも雪が積もって花が咲いたようで、子はそれを朝からずっと眺めていた。なぜか手を後ろで組み、校長先生のように立ちながら…。
保育園に向かう道中、ゆっくり雪を踏みしめて歩きながら「なんかきょう クリスマスみたい!」と大喜びだった。
絵本やテレビでしか見たことがない雪景色が目の前にあらわれたんだもんね。
私も7年ぶりだから少し新鮮な気持ちになったけど、初めての驚きといったら、どんな感じだろう。
初めてのことが少なくなるっていうのは良い面もある。初めてだと驚いてしまうようなことが起きても、前もこんなことがあったなぁと落ち着いて対処できるし。
できなかったことができるようになるのは嬉しいし、何事も経験だと思っている。
でも、こんなに目を輝かせるような「初めて」が、人生にたくさん残っているってちょっとうらやましいな。
きっと私にもまだまだたくさん残っているんだろうな。地球上で踏んだ土地の面積だってほんのわずかだ。話した人の数も。見た鳥の種類も。
今はあまりどこにも動けない時期だから、慣れ親しんだものをじっくり見つめ直す期間で、それだって新鮮だ。
子が保育園から帰ってくる頃には雪はすっかり解けていて、なんだか幻みたいな時間だった。
次に雪の中を歩けるときは何歳だろうね。
