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地下1階から地上3階まで、広い売り場に約1000点のアイテムが揃う、都内最大級のアンティークショップ『GEOGRAPHICA(ジェオグラフィカ)』。時代を越え、国を越えて、目黒通りのこのお店までやってきた家具たちのお話を、ダイレクターの岡田さんにお聞きしました。
家具から見えてくる、イギリスの上流階級の暮らし
こちらのお店は主に、1880〜1930年代のイギリスのアンティーク家具を中心に品揃えをしています。1930年代というと、まだ石炭がエネルギーとして現役だった時代。その頃に実際に使われていた家具からは当時の暮らしが見えてきます。
「ヨーロッパでは上流階級になればなるほど、目的別に部屋が分かれます。食事をする部屋、食事を終えた後に、男性がお酒を飲む部屋やたばこ(シガー)を吸う部屋、女性がおしゃべりをする部屋など、それぞれに専用の家具が置かれていました。この辺の低くてアームのついたソファはサロンで使われていたものですね。こちらはミュージックキャビネットと言って楽譜を入れるためのもの。大きな屋敷には音楽室があって、ピアノや色々な楽器を皆で演奏しました。そこで、楽譜を保管するために、こういう棚があったんです」と、岡田さんは家具を指しながら、説明してくれます。
ほかにも、図書室に置かれていたリボルビングブックケースという家具はキャスター付きの台で、本棚から取り出した本をのせて、ソファやデスクまで移動するために使うもの。机代わりにして、ちょっとした書き物をするのにも使えます。
「大きな屋敷の家具ほど、材料も良いものが使われていますし、凝った装飾が施されています。装飾の技術は非常に高度で、現代の職人さんでは作れないようなものがほとんどです」
そんな豪邸の高級品も、現代の一般家庭で普通に使えてしまうのがアンティークのすごいところ。当時の人と同じ使い方をしてもいいですし、違う用途で使ってももちろんOKです。きちんと修復してあるので、さらに20年、30年と使うことができます。
肘掛けのついた低めのソファはサロンで使われていたもの。ここに座って、どんな話をしていたのでしょうか。 こちらはミュージックキャビネット。鏡のふちや脚の先まで細かな装飾が入っています。アンティークの鍵がまたカワイイ。 中央に見える家具は、暖炉脇やキッチンで使われたコールボックス。石炭を入れる収納家具ですが、スリッパ入れやマガジンラックとして活用する人も。 丸い形のドラムテーブルは今の家具屋ではなかなか見かけないかたち。天板に張られた赤いレザーが印象的です。 テーブルの脚も芸術品のよう。16世紀中頃、エリザベス女王の時代から流行したブルボーズという装飾を取り入れています。
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アンティークを楽しむなら徹底的に!
GEOGRAPHICAはインテリアの総合ショップ。販売しているのは、家具だけではありません。1階のカウンターではインテリア相談や額装の注文も受け付けています。
「リフォームや新築で図面を持ってこられる方もいますし、カーテンをつくりたいというご相談もあります。どんな家具を合わせたらいいか、コーディネートのご提案をすることもありますよ」
額装は選んだフレームに絵や写真を入れて、きれいに仕上げてくれるサービス。海外旅行で買った絵や新婚旅行で行ったレストランのメニュー、思い出の写真など、皆さん思い思いのものを額装して飾っているそう。イメージに合う額できれいに仕立てれば、お部屋の雰囲気にもしっくり馴染みます。
アンティークで揃え始めると、どんどん手を広げたくなるもの。こちらのお店はそんな要望にもしっかりと応えてくれます。最近ではオーダー家具の製作をすることもある、と岡田さん。
「この時代の家具って、どれも背が高くて、テレビボードの代わりになるような低めの家具がないんです。でも、他がアンティークだとテレビボードだけ浮いてしまうというご相談があって。アンティーク塗装で仕上げてお納めしました。アンティークはどれも一点限りで、サイズから探すのが難しいので、椅子に合わせたテーブルが欲しいとか、テーブルに合う椅子がほしいというお話もあります」
1階では雑貨など、部屋で使う細々としたものが揃います。こんな食器でお茶を淹れたら、優雅なティータイムになりそう♪
額装の相談も1階で。たくさんのフレームが揃っています。 2階はパイン材の家具がメイン。カントリー調の乳母車やベビー服など、乙女心をくすぐる雑貨もいっぱい。 3階はマホガニーとウォールナットが中心。どっしりと歴史の重みを感じさせる家具も、表面は艶やかに仕上げてあります。 地下1階はオーク材の家具が中心です。シャツキャビネットやライティングデスクなど、どこか英国紳士の部屋を思わせる佇まい。
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今の暮らしにはない要素が、イマジネーションを広げてくれるアンティーク。所々に置かれた説明を読みながら、あれこれ考えていると時間の経つのはあっという間です。普通のインテリアは飽きたという方は、アンティークの世界に足を踏み入れてみると、案外おもしろいかもしれませんよ。
PHOTO by Yusuke Nishimura
GEOGRAPHICA
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テーブルを探しいらしたお客様が、たまたま見た椅子に一目惚れしてしまって椅子を買って帰るというようなことはよくあります。その機会を逃したら、アンティークは二度と同じものは入ってきません。まさに一期一会。色々見て、お気に入りを見つけてもらえたら嬉しいです。
by ダイレクターの岡田さん
東京都目黒区中町1-25-20
Tel. 03-5773-1145
Fax.03-5773-1146
11:00 – 20:00 無休(年末年始のぞく)