まさか6月を過ぎても在宅勤務が続くとは思っていなかった。
コロナによる影響も、なんとなくだんだん収束していって気付いたらまた元の日常に戻るものだと思っていた。そこにはなんの根拠もなかったのだけれど。
会社から支給されたノートPCで在宅勤務になった時、マウスパッドがないのは分かっていたがどうせまあ、すぐに出社になると踏んでいたので特別に用意はしなかった。
しかし、やはりマウスを直接机に当てていると思うように動かない。
7月も引き続き在宅勤務を知らされた時に、いい加減マウスパッドを用意しようと思った。
どうせなら、作るか……。
というわけで今回はマウスパッドを作ります。
ヤンキーの多い街
マウスパッドがない時のポインタのように思った通りにいかないな……と思い出したことがある。
話は中学一年生に遡る。
僕の地元は岡山県と四国の香川県をつなぐ瀬戸大橋のたもとの街。自転車を20分も漕ぐともう海に出てしまうようなのどかな場所だ。
どういうわけか海辺の町はガラの悪い人が多いと聞いたことがある。
僕の街も御多分に洩れず、中学校に入った途端にヤンキーという存在を意識せざるを得なくなった。
平和で均一な関係だった小学校からいきなり敬語を強制され、上下の差が明確になる中学校。
年代にもよるかもしれないが、僕が中学校に入った時は特に尖った先輩、つまりヤンキーが多かったように思う。
授業中に爆音のバイクで校庭を走り回る。学ランに描かれた刺繍、喧嘩、リーゼント、カツアゲなどマンガで見た世界が実際にそこにはあった。特攻(ぶっこみ)である。
中学生のヒエラルキーなんて、ヤンキー、もしくはスポーツができるやつが上にきて、僕のようないたって平凡な人間はモブキャラ中のモブ。下層中の下層である。
それでも中学でできた新しい友達とともに、未来への希望や憂鬱に胸を躍らせていたものだ。
解放される中学生
そして行動範囲も一気に広がる。
小学校の頃はここから先へは子供だけで行ってはいけない「学区」というものがあり、学区を超えることを学区外と言っていた。少し遠いところに子供だけで行ってはいけないルールがあったのだ。
それを破ると先生にチクられるので、皆きっちり守っていた。
それが中学校に入った途端に解き放たれる。どこへ行ってもいい。これはかなり大きな変化であった。
ある日、常に浮かれている僕らは友達数人とともに鷲羽山ハイランドへ遊びに行こう! と計画を立てたのだ。
鷲羽山ハイランド
遊園地のことである。ハイランドと名乗るからにはやはり鷲羽山(わしゅうざん)という山のてっぺんにある。
二人乗りで高い場所のレールを漕ぐスカイサイクルが一部で有名だ。今でもたまにネットの話題として見かけることがあり懐かしく思う。
なぜ話題になるかというとレールが一部、崖からはみ出して完全に空中を漕ぐという体験ができるからだ。これは僕が中学生の頃からあった。ちなみに本当に怖い。
そのほか、この遊園地はジェットコースターなどの絶叫系が充実していたり、夏はプール、冬はスケート、そして定例のサンバのイベントなどを毎日行っていたりしてとても活気のある遊園地だった。
小学生の頃、大人と一緒に何度か遊びに行ったことはあるのだが、学区というテリトリーの規制が解かれた中学生になり、よし!ここは僕たちだけで遊びつくそうとなったのだ。
予定は週末の土曜日。部活も休みだ。
少ないおこずかいを頼りに僕たちは週末を楽しみにしていた。
待ち伏せヤンキー
中学校への道は通学路という決まった道を通らなければいけない。
冒頭でも少し話したが、地元の街にはやたらとヤンキーが多い。
二日に一回くらい、ヤンキーがなぜか通学路でたむろしているのが日常であった。目を合わせると喧嘩を売っていると絡まれるし、目をそらしていても絡まれるときは絡まれる。
ずいぶん理不尽な日常である。
ほとんどの人が自転車で通学していたのだが、どんなにはしゃいでおしゃべりしていても、ヤンキーがたまっている横を通る時は下を向き空気のような存在として振る舞うことになる。
もちろん僕はしたことがないので分からないのだが、カツアゲしやすい人間というのがいるのかもしれない。そしてどうやら僕はそうだったらしい。中学の間で何度かカツアゲをされた経験がある。
通学路での出来事であった。
自転車に乗って帰宅途中だった僕は、ちびまる子ちゃんに出てくる永沢君のような髪型をした人に呼び止められた。これは本当にそうだったのだ。短いモヒカンを寝かせたような髪型だ。
学年と名前を聞かれ、答えると永沢君は兄と同級生だったらしく、「おーお前、あいつの弟か!」と少し親しげになった。そして絶対に返すからと僕はするりと千円を吸い取られたのだ。
何も知らない純粋ウブだった僕は、兄の友達?であろう人なら普通に返してもらえると思っていた。
帰宅後、その出来事を兄に話すと
「……その千円は返ってこないぞ」
と言われそこでようやくあれはカツアゲだったのかと気がついた。きっと逆らっていたらなかなかめんどくさいことになっていたのだと思う。
二つの道、選択……
さて話を戻そう。
週末に鷲羽山ハイランドに行くことになっていた僕たちは、金曜の部活が終わって自転車を漕いで帰路についていた。
通学路の道中には、ヤンキーがたむろしているスポットがある。自販機があり、ちょうど座るのに良い高さのガードレールがある場所だ。
普段であれば存在を消すか、他の帰っている集団に紛れてなんとなく通り過ぎるのだが、今日はカツアゲにひっかかるとやばいと内心でみんな思っていた。
鷲羽山ハイランドにいく軍資金を失うわけにはいかないのだ。
そこで僕たちは考えた。
このまま通学路を守って帰るとヤンキーに出くわす可能性がある……。
しかし、別の道から帰るとすれば、もしヤンキーがたむろしても出くわさない。
要は危険を回避しようという話になった。
選んだ道の先には……
良い思考だったと思う。しかし、これにはまた別の問題があった。
「通学路以外の道を通ってはいけない」
そもそも通学路は学生が事故などに合わず、安全に帰宅できるよう定められた道だ。基本的にイレギュラーは自宅のそばだけだ。
そこ以外を通るのはいけないのではないか……。
これはピュアな中一の僕たちには、なかなか勇気のいる決断だった。
しかし、ヤンキーが頻繁に発生し、運が悪ければカツアゲされたり意味なく絡まれたりする道の方がよっぽど通学路としてどうかと思う、というだれかの真っ当な意見にみんな頭を上下する。
今日はダメなんだ。今日だけはカツアゲされるわけにはいかない。
そう腹を決め、僕たちは通学路とは一本外れた道に自転車のハンドルを切ったのだった。
これで安心とすいすいと自転車を漕いでいた僕たちの目にはいったもの。
それはカラフルなリーゼント。
そう、ヤンキーだ。
こっちにもいんのかよ。
ヤンキーもたくさんいるのだ。
いつも通学路にたむろしているやつらとはまた違うメンツである。永沢君でもない。
なんて選手層が厚いのだろう。裕福な球団か。
検問のように僕たちの自転車は止められ、ニチャニチャと難癖をつけられたうえにカツアゲされたのはもはや言うまでもないだろう。
そうして僕たちの鷲羽山ハイランドはめでたく延期が決定。
やっぱり思い通りにはうまくいかないもんだ……。
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