近所に小さな川が流れているのですが、時々どこからともなく流木が川岸に辿りついていることがあります。犬がそれを咥えて、飼い主のもとへ嬉しそうに走って行く様子は、見ていて微笑ましいです。とくに雨の日は流れてくるものが多く、水や岩に削られてできあがったその形は、まだどこかに生命力を宿しているような、独特の魅力があります。
懐古的で、どこか未来的なオブジェ。
花の命は短い、という言葉がありますよね。比喩的な意味で用いられていますが、本物の花においては、果たしてそういえるでしょうか。たしかに、香りを放ち、みずみずしい花弁をつけている期間は短いですが、移ろう時の中で、また別の美しさが生まれるような気がします。
プロダクトデザイナー・寺山紀彦氏が手がけた『Erosion of the polygon』は、ドライフラワーを用いたオブジェ。植物の「外皮」に沿って描かれているのは、その植物のもつ有機的なフォルムを人工的に表現したポリゴン(多角形)です。植物の芽や枝などからとった点と点を、真鍮の菅でつなぎ合わせ、形成されています。この2つの「外皮」を対比させることで、形の美しさをより明確にさせたアート作品なのです。
時の流れとともに変化した植物。その有機的なフォルムを無機質な素材・真鍮を用いて、新たなかたちで表現しています。その無機物も、植物と同じく時間の流れとともに緩やかに変化をとげるものです。有機と無機は相容れないように見えますが、それらの性質は同様に一定ではありません。両者の間に垣間見える、わずかな共通項。これが、Erosion of the polygonの持つ不思議な魅力を、引き立たせているのでしょうね。
「流木やドライフラワーには役目を終えた美しさがあり、人を惹きつける。その魅力をよりよく見せることは出来ないか」と、このシリーズを生み出したという寺山氏。通常であれば、おそらく土にかえるであろう植物に、同氏は“第二の人生”を与えたといえるのではないでしょうか。
どこか懐かしいような、でもどこか真新しいような、独特の雰囲気をまとっているErosion of the polygon。時を経た植物のもつ美しさを、別の側面から見つめてみてはいかがでしょうか。
Erosion of the polygon
ドライフラワーをとり囲む真鍮の管を糸で繋ぎ、構成しています。
真鍮がドライフラワーを引き立たせ、より美しく魅せています。
一つ一つ手作業で作られており、有機的な自然物と人の手による繊細な手仕事が融合している作品です。
素材:ドライフラワー、真鍮、糸
公式サイト:http://studio-note.com
(価格・ラインナップは2018年3月現在のものです)
¥16,200〜(税込)