文鳥が家にやってきたとき、本当は違う名前をつけたのだけど、「文鳥」と呼ぶと返事するのがかわいくて、いつのまにか本当の名前も「文鳥」になった。
もうひとつ、私たちが何かかわいいものを見て「かわいい〜!」と盛り上がっていると、文鳥は、遠くでくつろいでいても「呼んだ?」という顔をして、返事をしながらいそいそと飛んでくる。「かわいい」という言葉に反応するから自分の名前を「かわいい」だと思っているのでは?と思って、文鳥のことをこっそり「かわいいちゃん」と呼ぶこともある。
自分のことを「かわいい」だと思っているなんてすごくかわいいな。どう育てたらこうなるんだろう。そういえば育てたのは私だったなぁ。だけど、私は文鳥には何も教えていない。飛び方も水浴びの仕方も寝るときのポーズも。全部文鳥がもって生まれたものだ。
何も教えていないけれど、文鳥は自分の中の引き出しからそのやり方を、そっとひっぱり出して、ととのえて、身につけて、あっという間に全部自分でできるようになった。1年経っても2年経っても、たいして変化しない私から見たら、そんなに急がなくていいよというぐらいのハイペースで。
その様子を間近で見るのは楽しかった。ヒナを育てるといっても「こうするんだよ」と文鳥に見せてもらうばかりで、私にできるのは食事などの基本的なことと、安心できる場所を用意すること、見守ることぐらいだなぁとつくづく思った。
文鳥がこの暮らしをどう思っているのかわからないけれど、ずっとずっと安心して、自分のことをかわいいと思って生きて行ってほしいなぁ。
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