vol.06 かわいいちゃん

文鳥が家にやってきたとき、本当は違う名前をつけたのだけど、「文鳥」と呼ぶと返事するのがかわいくて、いつのまにか本当の名前も「文鳥」になった。

もうひとつ、私たちが何かかわいいものを見て「かわいい〜!」と盛り上がっていると、文鳥は、遠くでくつろいでいても「呼んだ?」という顔をして、返事をしながらいそいそと飛んでくる。「かわいい」という言葉に反応するから自分の名前を「かわいい」だと思っているのでは?と思って、文鳥のことをこっそり「かわいいちゃん」と呼ぶこともある。

自分のことを「かわいい」だと思っているなんてすごくかわいいな。どう育てたらこうなるんだろう。そういえば育てたのは私だったなぁ。だけど、私は文鳥には何も教えていない。飛び方も水浴びの仕方も寝るときのポーズも。全部文鳥がもって生まれたものだ。
何も教えていないけれど、文鳥は自分の中の引き出しからそのやり方を、そっとひっぱり出して、ととのえて、身につけて、あっという間に全部自分でできるようになった。1年経っても2年経っても、たいして変化しない私から見たら、そんなに急がなくていいよというぐらいのハイペースで。
その様子を間近で見るのは楽しかった。ヒナを育てるといっても「こうするんだよ」と文鳥に見せてもらうばかりで、私にできるのは食事などの基本的なことと、安心できる場所を用意すること、見守ることぐらいだなぁとつくづく思った。

文鳥がこの暮らしをどう思っているのかわからないけれど、ずっとずっと安心して、自分のことをかわいいと思って生きて行ってほしいなぁ。

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amycco.さんの著書「文鳥ちゃん」

yabai

文鳥ちゃんは、羽のお手入れと恋に夢中な白文鳥の女の子。
人間の「あきぴょん&えみ夫妻」と一緒に楽しく暮らしています。
ところがある日、文鳥ちゃんはあきぴょんに恋をしてしまい……
あきぴょんをめぐる恋の三角関係の行方は……?
¥1,512(税込)

『文鳥ちゃん』

amycco.著
出版年月日 2016/4/19
ページ数 111p
定価 本体1,400円+税

amycco.

amycco.prof

イラストレーター。

雑誌や書籍、雑貨などを中心にイラストレーターとして活動中。毎日文鳥に怒られている。

『文鳥ちゃん』(洋泉社)発売中。

公式サイト:http://amycco.com/