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雑談したい気持ちがつのりすぎて、今まで何年もの在宅ワークでも使ったことのなかったオンラインミーティングのアプリを試してみた。
旅好きの友達と3人で、最初は普通にしゃべっていたけど途中からはグーグルストリートビューでニューヨークや滋賀県をワイワイ旅した。
随分前に撮影された映像なので、ニューヨークには人がいっぱいいた。琵琶湖はどこまで移動しても曇っていた。
お互いの顔を見ながら話すのもいいけれど、一緒に何かをしながら、見ながら、ワイワイするのって楽しい。
同じ景色を見て、わぁきれい、人多い、めっちゃ曇ってるやん、と言い合うだけでもちょっと楽しい。
ただ話したいだけじゃなくて、体験を共有したいのだ。
こうやって盛り上がっている間も手元にあるおいしいお菓子をわけ合えないのがちょっともどかしい。
画面の上で世界中の行ってみたい街を旅して、話したい欲は満たされて、旅したい欲は満たされなかった。
車の通らない細い路地を歩きたい。
青い空の下を流れているだろう風を感じたい。
道端の花をしゃがんでじっくり見たい。
緑いっぱいの大きい公園で鳥のさえずりに囲まれたい。
視界いっぱいに広がる海を見たい。
地元の人となんでもない話をしたい。
おいしそうなお店にふらっと入ってみたい。
見晴らしのいいところで日が沈んでいくのをずっと見ていたい。
真っ暗になるのを待って夜空を見上げたい。
ホテルの朝ごはんが食べたい。朝のひんやりしたさわやかな空気に触れたい。
狭い飛行機で機内食を食べたい。どんなメニューかなぁってワクワクしたい。
飛行機あと10時間も乗るのかぁ、暇だなぁって思いたい。
やっと帰ってきた、旅もいいけどやっぱり家は落ち着くなぁって思いたい。
もう2度と会えないかもしれない旅先で出会った人のことを10年経っても懐かしく思い出したい。
あの人は今も、あの街で日常を送っているのかなぁ。元気にしているかなぁ。
よくできた食品サンプルを見ておいしそうって思うように旅欲は刺激され、そしてそれは手には取れず、においもせず、食べられないのだった。
同じように自分は直接触れられなくても旅番組や写真集やスケッチを見て気持ちが満たされることがあるのは、その人がその場所で光や風やにおいを感じたときの生き生きした気持ちの動きが伝わってくるからなのかもしれないなぁ。
これから徐々に普通の生活が戻ってきたとしても(くるといいなぁ)、世界中自由に旅できる日が戻ってくるのはもっともっと先になるだろうな…。
あぁ、本物の旅がしたいなぁ。そのときが来るのを小さな画面から誰かが撮影した世界を覗いて待っている。旅がしたいなぁ。
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