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ゴールデンウィークは、フェリーに乗って鹿児島に住んでいる義理の祖母に会いに行く予定だった。
まだ結婚したばかりで新しい親族とのいろんな習慣の違いに戸惑っていた頃に、おおらかな笑顔で本当の孫のように接してくれた大好きなおばあちゃん。
前回会いに行ったのは3年半前。生まれて2ヶ月の子の顔を見せに、そのときも電車とフェリーとバス、レンタカーを乗り継いでゆっくりゆっくり会いに行った。
その後おばあちゃんは孫たちの結婚式に出席するために何度か私たちの住む関西に来てくれたけれど、こちらから行くのは本当に久しぶりだった。
楽しみにしていたけれど、緊急事態宣言が発令されて計画はキャンセルに。
オンライン帰省が推奨されていたけれど、おばあちゃんの家は人里離れたオフラインの地なのでオンライン帰省もできなかった。
予定がぽっかりと空いたゴールデンウィークが始まった。
何か他のことをしていても、「予定通りなら今頃フェリーに乗ってたな…」「予定通りなら今頃おばあちゃんと一緒にお昼ごはん食べてたな…」と隙あらばパラレルワールドに思いを馳せてしまう。
パラレルワールドの私たちはとても楽しそうだ…。少し前まで普通にあったはずの世界がとても遠い。そちらの世界が恋しくて仕方ないよ。
行けなかった旅に思いをはせながら狭い世界にこもって過ごしたゴールデンウィークだったけれど、緑はみずみずしく、花は色鮮やかで、誰もいない森はとても静かでにぎやかだった。
空は青くて、空気はカラッとしていて、蒔いた野菜の種からはぐんぐん芽が出るし、全然退屈しなくて結構楽しかった。
枯れたように見えていたレモンの木からも新しい葉っぱがモリモリと出てきた。世の中がストップしてしまったと思っていたけれど、ストップしていなかった。
美術館には長い間行けていないけれど、こんなにも美しいものたちに囲まれて生きているんだなぁとうれしくなった。
木は最高。花も最高。でも人にも会いたいな。
次会えるときまで絶対に元気でいよう。いつかパラレルワールドの私に、こっちの世界も悪くなかったよって言えるといいなぁ。
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