「ただ、音楽が好き」が、つらなって、つながって、いまココ。【DAWA(FLAKE RECORDS)】
大阪・ミナミにある何の変哲もない商業ビル。小さな入り口をくぐり、ひとつ階段をあがったその先に、世界的に存在を轟かす誉れ高きレコードショップがあることを、ビルの前を行き交う人々の多くは気づくことがないのかも知れません。
FLAKE RECORDS。一部ではレコードカルチャー自体が終焉を迎えたとすらささやかれる中、気付けば10年にわたって、多くのミュージックラバーから、そしてミュージシャンから絶大な支持を受け続けてきました。
しかし、その店主であるDAWAさんは、一見どこにでもいそうな大阪の良き兄ちゃん(ん? もうおじさん??)だったのです……。
柔軟に、そして正直に。ブレる前提の軸を持つ。
フレークレコーズがあるのは、大阪きっての繁華街であり、さまざまなカルチャーの発信地である南堀江。ビルの一室にある店舗は、決して広くはなく、過度な装飾もなく、ただ、音がある。そんな感じ。だからこそ、音楽好きには、たまりません。
簡素ながらキレイに、ズラリとディスプレイされたアナログ盤たちは、若い人たちには新鮮な光景なのかも知れません。そして、その間に置かれているのは、古くからのミュージックラバーにはお馴染み、nakamichiの試聴機。これら店内のいたるところに、DAWAさんの哲学がつまっています。
「今の時代ってね、お店にMacとかiPodとかを置いて『これで聴けますよ』って提示してもぜんぜんアカンねん。ちょっと偉そうな言い方になるけど、お客さん側の判断能力が低くなっているんかな。“なんでも聴ける”ってなると、何を聴いていいかが分からない。こっちでセレクトして『これがいいよ』って提示してあげないとダメ。
だからnakamichiを使ってオールドスクールなやり方を貫いてる。“なんでも聴ける”っていうのは、実はすごくマイナスなんよね」
お店にあるアイテムも、海外のアーティストを中心にDAWAさんの嗜好性の強いセレクトであることが、よく分かります。
「もちろん定番のアイテムも揃えてはいるけど、もともと俺のわがままでつくったようなお店やからね。好きな人だけが集まってくれたらいいと思ってた。例えば、日本のアーティストでもっと売上が見込めるものを置いたら? みたいなことも言われるけど、やっぱり興味のないバンドは興味ないから。
最近は『やっている音楽はぜんぜんいいと思わないけど、メンバーとは仲がいい』っていうバンドもたくさんあるよ。頻繁に飲みに行ったりはするけど、お店では扱わない、みたいな。『ダサいな』って直接いうこともあるし。でももちろんメンバーたちはそれをダサいと思ってやっていないし、たまたま俺にはいいと思わないだけ。向こうも俺にはハマっていないって分かってる。そういう関係もたくさんあるねん」
百歩譲って、自らの考えを貫き通すこと自体は、さほど難しいことではないかも知れません。しかし、ビジネスとして成立させるとなると、話は変わってきます。
「そこはね、売りたいものを売るだけの説得力をこっちが持てばいいと思っている。だから、いまはTwitterがめっちゃ大事やねん。Twitterがなかったら、もうお店、潰れてるんちゃうかな(笑)
そもそも、とりあえずつぶやいていたら、『あいつ、最近の音楽、きちんとおさえてるな』って勝手に思われるようになってた、みたいな部分もあったし」
リスナーに媚びず、流行に左右されず、セレクトや売り方には自分の軸を持つ。それは開店当初から決めていたそうです。しかし、その“軸”の置き方が、他とはすこし違っていました。
「俺の場合、自分でも軸がブレていってることが分かってて。だって筋が通っていると、めんどくさいやん(笑)。前に『良い』って言ってたバンドが、ぜんぜん良くないと思うことだってあるわけやから。柔軟に、正直にそれは言えるようにしている。
例えばEDMとかかな。出てきたころはカッコいいと思ってたけど、いま聴くとクソダサいとしか思えへん(笑)。その辺の意見がブレてしまうことを、俺はあまり悪いことやと思えへんから」
「軸は、ブレるもの」という軸。DAWAさんの持つそのスタンスが、信頼を失うのか、逆に信頼度を高めるかは紙一重なのかもしれません。
しかし今のところ、それがマイナスに動いているようには見えません。というのも、3年ほど前、とある海外メディアが発表した『死ぬ前までに訪れるべき魅力的な世界のレコード店 27選』という記事に、タワーレコード渋谷店と並んで、日本からたった2店舗、フレークレコーズが選出されたのです。
唯一無二、良質なレコードショップであることは、今や世界的に知れ渡っているようです。
「ビックリしたよ。俺もなんで選ばれたのか分からへん(笑)。でもあれ以来、海外から来る旅行者のお客さんはめちゃめちゃ増えたね。
今ってレコードを買いたいと思っても、案外買えるところがないし、それこそうちにみたいにアナログ盤がズラッと並んでるようなお店は少ないからね。しょっちゅう新しいモノを入れ替えてるし。
最近、美術館とかギャラリーとかで『レコードジャケ展』みたいなのをやってるけど、『こっちは毎日やっとるわ!』って(笑)。でも、そういう部分がウケてるのかもね」
PHOTO by Genta Hisada
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