「ただ、音楽が好き」が、つらなって、つながって、いまココ。【DAWA(FLAKE RECORDS)】
大阪・ミナミにある何の変哲もない商業ビル。小さな入り口をくぐり、ひとつ階段をあがったその先に、世界的に存在を轟かす誉れ高きレコードショップがあることを、ビルの前を行き交う人々の多くは気づくことがないのかも知れません。
FLAKE RECORDS。一部ではレコードカルチャー自体が終焉を迎えたとすらささやかれる中、気付けば10年にわたって、多くのミュージックラバーから、そしてミュージシャンから絶大な支持を受け続けてきました。
しかし、その店主であるDAWAさんは、一見どこにでもいそうな大阪の良き兄ちゃん(ん? もうおじさん??)だったのです……。
全力で。本気で。未来のジャパニーズ・ミュージックへと鳴らす警鐘。
海外アーティストの日本盤リリースや、来日ツアーのオーガナイズ、自身のイベントプロデュースやDJ活動……、DAWAさんの活動は日々のレコードショップ運営だけにとどまることはなく、この記事では紹介しきれないほど。
それらに加えて、週に2~3回は必ずライブ会場に足を運ぶというから、そのフットワークの軽さには驚きを隠せません。
「ライブにも打ち上げにもよく顔は出してる。だけどバンドとの距離感って難しいよな。邪魔になったらアカンし、ツアー中だとしたらバンド同士がしゃべるのが1番いいやん?
あと俺の場合は、バンドのメンバーと直接仲良くなることが多いから、マネージャーにも気を遣ったり。普通はレコード会社の人が営業にくるけど、うちの場合はメンバーが来てしまう。後からマネージャーに会うことも多くて、ちょっと気まずくなることもある(笑)」
関西へライブに行くたびに、フレークに顔を出す。そんなアーティストもたくさんいるようで、DAWAさんが慕われていることがよくわかります。
自分の目で、耳で、シーンの今を常に見つづけているDAWAさんだからこそ感じる、現状への危機感もあります。
「たとえばこの前、ボン・イヴェールのライブに行ったんやけど、客がぜんぜんいなかった。キャパが2,500人のZepp大阪で、500人くらいやったかな? しかもそのうちの300人くらいは、海外から来た外国人やったんちゃうかなと思うくらい。
ボン・イヴェールは何年か前にグラミーを獲って、世界中のどこでもチケットがとられへんアーティスト。そのライブのチケットを売られへん日本はマジでやばいと思ってる」
2017年1月4日。お店のお正月休みが空けたその日、公式Twitterには「全力でやっていきます。役に立つかはわからないですが、でも、日本の未来の音楽シーンの刺激になりたいなと。本気で」とつぶやきがありました。
短いそのセンテンスに、真剣に業界の活性化に寄与するんだという気概を感じます。
「今のリスナーって、音楽の良し悪しを、“共有感”みたいなところで決めてしまってる。だからフェスとかも、最近はあまりいい方向には動いてないよね。そこにいけば同じ音楽を好きと思っている仲間がちょこっといて、そのコミュニティの中でだけ盛り上がることで、やっぱりそれが良いって洗脳されている部分もあるんじゃない?
その人にとってはそれが正解なのかもしれないけど、やっぱり世界の音楽カルチャーとのズレが大きすぎて、俺は危機感を持ってしまう。数年後にはオリンピックを開催する国やのに、世界で認められている音楽を多くの人が認めていないのは、問題じゃないかな」
業界の形、シーンの状況、流通されるフォーマット……。
目まぐるしく変遷していく音楽の世界において、多くのレコードショップが立ち行かなくなっていく中、独自のスタンスをキープしつつ、10年に渡って地道にその歩みを進めるフレークレコーズ。
今では音楽業界における1つの成功例として認知され「DAWAさんのように、レコードショップをやりたい」と言ってくる若者もいるようです。
「自分が歳をとるにつれて、若い音楽を紹介する時に説得力がなくなってくるし、一方で、自分にとっては必要ないブランドとか権威みたいなものもくっついてくる。あと、耳も老眼になってくるしね。
だから若いスタッフを入れようと思ったりもするけど、うちくらいの規模でやっていると、給料を払うのもままならないし、なかなか難しいのよ。
とにかく細々とでも続けてさえいたらさ、何かが起こるから。面白い仕事の話が来ることもあるし。でも俺が辞めてしまうと、そんなのもすべてなくなっちゃう。このまま継続していくことやね」
ただ、音楽が好き。そんなシンプルなところから紡がれ始めたDAWAさんの物語は、まだまだ終わりを迎えようとはしません。
PHOTO by Genta Hisada
FLAKE RECORDS
〒550-0015
大阪市西区南堀江1-11-9 SONO四ツ橋ビル201
TEL:06-6534-7411 / FAX:06-6534-7412
12:00 – 21:00 年中無休(年末年始は除く)
WRITER'S VOICE
人としての優しさも、音楽への純粋な愛も、何も変わらない。
「自分の軸はブレていく」という話も、「やっている音楽はダサくても、メンバーとは仲がいい」という話も、DAWAさんらしくて、とってもステキだなと。
実は僕、高校生の頃にDAWAさんとバンドを組んでいたんです。スタジオ帰り、自分の家とはまったく逆の方向にもかかわらず、電車の定期がある僕の高校の最寄り駅まで車で送ってくれるっていう、当時から優しい人でした。
その車のカーステで、ナイン・インチ・ネイルズや、デビューしたばかりのドラゴン・アッシュを教えてもらったのも、今ではよき思い出。