“オシャレオモシロフドウサンメディア ひつじ不動産”。シェアハウスに関するポータルサイトとして、物件の紹介だけでなく、関連するイベントや市場調査レポートなど、さまざまな角度からシェアハウスに迫る情報を発信し、圧倒的な人気を博しています。
今回は、そのひつじ不動産がプロデュース・運営するシェアオフィス『PoRTAL』にて、立ち上げ人であり、運営会社の代表を務める北川さんにお話を伺いました。
サービスのスタートに至った経緯から今後の展望まで、ライフスタイル提案としても、“メディア論”としても、深さ、濃さともスペシャルな内容でお届け。シェア生活を考えている人も、シェアハウスの事業者も、はたまた空き物件に困っている物件のオーナーやメディア運営者も、必見の内容です!
“希望”と“ヒント”が詰まった『外人ハウス』
シェア住居の専門メディア『ひつじ不動産』。押しも押されもせぬ人気サイトとして、その名を馳せています。お話をうかがった北川さんは、都内にある数十件の物件情報を掲載した状態で『ひつじ不動産』を立ち上げ、そこからずっとサービス全体のディレクションを担当。運営会社である『株式会社 ひつじインキュベーション・スクエア』の代表も務めます。
2005年のサイトスタートから、さらにさかのぼること数年。駆け出しのプログラマーとしてお仕事に精を出す北川さんは、体調を崩したことを理由に、実家に戻ります。そして体の状態がよくなり、もう一度、家を出ようと考え始めたタイミングで、その後の人生に大きな影響を与える出合いが待っていました。
「独り暮らしを再開させたかったのですが、お金がないし、何かいい方法はないかなと考えていて。少し調べると、家の近くに外国人が共同生活をする住宅があることを知りました。そこに住む人たちは、ほとんどが自国に帰ればきちんとしたビジネスマンであるにも関わらず、当時の東京という地は、彼らが普通の賃貸物件を簡単に借りられる時代ではなかったんでしょうね」
今のように「シェアハウス」という名称すらなかった時代。その建物は『ゲストハウス』や『外人ハウス』と呼ばれ、とてもひっそりと営まれていたとのこと。当時は“得体の知れないもの”に対して今より厳しい目が向けられる時代で、近隣の住人にも内容を伝えることなく、運営されていたところも見られたようです。
それを証拠に、長く暮らしたいつもの街の、何度も前を通ったことがある場所にも関わらず、北川さん自身もそこが『外人ハウス』であることを知りません。問合せをして見学に行くと、そこにはまるで異国のような空間がありました。
「そこはかつて企業の社員寮だったものをオーナーが借り上げた物件で、80室くらいある大きな建物でした。食堂とキッチンをあわせて100平米ちかくあるリビングに、何人も外国人がいて、ソファで英字新聞を読んでいたり、キッチンで料理をしていたり、そういう光景が広がっていたんです。
そこには異国情緒みたいな面白さもあったし、住宅やライフスタイルとしての面白さもありました。
ごく普通の日本の住宅が並ぶ中で、誰にも知られることなく、そんな秘密基地みたいな場所があったことにも驚きましたし、とにかく一瞬で気に入りました」
世界各国から東京にビジネスで来ていた外国人や、少し変わったカルチャーを好む日本人が集まる空間。しかし、その建物の前を通っても、中がそんなことになっているとは誰も分からない。そんな魅力に一瞬にして心を奪われたという北川さん。そして何より彼のハートを射止めた要因が他にありました。
「特に僕がその場所を魅力的に感じたのは、すべてが“実用”で成り立っていたからです。最近よく聞かれる“コミュニティ”とか“絆”みたいな、清くて素晴らしい概念のために集まったわけではなく、「賃貸が借りられないから」というような、それぞれに実用的な理由ありきで、バラバラの人たちが集まり、自然な関係性を築き、その中で自然なコミュニケーションが育まれ、また自然に終わっていく。そんなスタイルが非常に共感できましたし、確かな持続可能性を感じました。
また、当時は今と違って、この業態は役所や地域からも奇異な目で見られている部分があり、言わば誰にも応援されていない中で、運営を担う事業者自身の力だけで何とか持続させないといけない事業だったんです。そういった環境のなかで、あまり誰に褒められるわけでもなく供給を続けていた。だから良くも悪くも“クセの強い”オーナーが多くて、それもちょうどいい感じでした」
“シェア”という概念が一般的となった昨今。「ソーシャル」や「コミュニティ」といった価値観がもてはやされ、それゆえに、シェアハウスという文化が日本にも根付き、活気づいた側面は疑いようもありません。ただ、北川さんはそことは違う部分を見ているようです。
「個人の信頼関係で成り立っていたり、何かしら崇高な目標に向かって集まったりするような共同体が増えてきていて、もちろん『それはそれでいいな』と素直に思いますが、僕の個人的な感覚から言うと、そういったものに興味はありません。“意識の高い”話にはあまり共感できなくて(笑)。そうではなくて、それぞれの必然的な実用が重なり合うことで、出会うべくして出会う関係性みたいな方が僕は好きですね。
シェアハウスで言うと、入居者が高い意識などは持つ必要はないと思っているし、その方が案外サスティナブルで、ロマンチックな気がします。『つながり』とか『コミュニティ』とかって、口に出して言わないからこそ、よくないですか? その辺は、本当に個人的な感覚の違いですけどね(笑)」
どうやらこのあたりの考え方から、その後リリースされる『ひつじ不動産』がカタチにすべき価値観がぼんやりと見えてきます。
外人ハウスで見たもの、感じたもの。それは“外国人が、たまたま”という狭い文脈の上に成り立っているものでしたが、実はそれは誰にでも享受できるものではないだろうか。もっと進化・発展させられるのではないだろうか。
若き日の北川さんがそんな疑念を抱いた数年後、『ひつじ不動産』は産声をあげることとなります。
PHOTO by Kaori Nozaki / ひつじ不動産より支給
オシャレオモシロフドウサンメディア ひつじ不動産
シェアハウスの総合メディア。
2005年5月末の運営開始から、シェアハウスという文化の拡大と歩みを合わせ、その時々の市場全体の様々な課題の解消などに向き合いつつ、日々地道な取り組みを続けています。
PoRTAL
つかえる、はかどる、ひろがる仕事場。
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