すべての表現は、“意志”とともに。【はりー / mon.you.moyo】

リノベーションスタイル屈指の人気コンテンツ『ルームシェアコラム 帰りに牛乳買ってきて』の筆者、はりーさん。そうです。部屋に転がり込まれた方、コップと靴をどんどん使う方、そして、片付けない方です(あ、それは2人ともか……)
『帰りに牛乳買ってきて』では、ポップなトーンのイラストと、どこか癒し要素を感じさせるストーリーが人気のはりーさんですが、実はもう1つの顔がありました。もう1つというか、完全に別。別すぎる顔、なのです。
そんな複数の人格とクリエイティビティが、1つの身体に、そして脳内に矛盾することなく同居しているという事実が、はりーさんの作家性をより深いものにしているのかもしれません。

普通の女の子、の下に潜む“クセ”の強さ

テキスト+テキスタイル+イラストレーション=『テキストレーター』という肩書で創作活動を行うはりーさん。

図らずも強いメッセージを併せ持つその作家性は、自身が生まれ育った家庭環境に由来しているようです。

「私の実家は昔から続くおせんべい屋さんで、お店にはたくさんの古い道具がありました。その道具たちの中には、ずっと残っているものもあれば、変わっていくものもあることを知って、気付けば、そういった“時代の流れ”みたいなものにすごく興味を持つようになったんです」

兵庫県で今も営業を続ける実家のおせんべい屋さんは、はりーさんのお父さんが六代目というから、かなりの老舗。その環境の中から芽生えたものは、少なくありません。

「例えば、代々使われてきた焼型があります。それは富士山が登場する昔話をモチーフに作られたものなのですが、今は2つしかないその焼型は、もともとは15種類もあったらしいんです。

そんな話を聞くと、『戦時中に、金属製のものは国に回収されたからかな?』とか『隠してこっそり置いておけばよかったのに』とか、いろいろ考えるようになっていって……」

生粋の職人であるお父さんと、性暴力被害にあった女性をサポートするNPO団体の運営に携わるお母さんという、少し“くせの強い”両親を持つはりーさん。個々の作品に、強い意志が宿るのも必然なのかも知れません。

  • 語り口も表情もとっても穏やか。一見、どこにでもいそうな女の子。

はりーさんの表現方法は主に2つ。1つ目は、テキストとイラストで日本の民話を自分なりに再解釈し、そこに潜んでいるメッセージやルーツを提唱しなおすもの。もう1つは、そこにテキスタイルの要素を加え、スカーフなどの装飾品を作り出すもの。

そのどちらにも共通して流れる、大テーマがあります。

「私は自分の作品を通して、世の中のレギュレーションとされるものをすべてなくしたいんです。

例えば、ご飯をつくったり、子育てをしたりするのは女性だ、とか。男性は外に出て働かなくてはいけない、とか。あと、男らしくとか、女らしくとか。そういったものを壊したい。

昔から残っている風習やルールって、今の感覚には合わないものもありますよね。でも残っているのには、原因があると思うんです。自分が創作活動を行っていく中で、それを紐解けるんじゃないかなと思って」

  • イラストとテキストで民話の再解釈をしたり……
  • 外出時に“装備する”スカーフをつくったり……

絵を描く。文字を添える。デザインする……。はりーさんの表現には、そのすべてに目的と意図があります。

今なお世の中に残る漠然としたルールや決まりごと。それが本当に意味のあるものなのか。時代とマッチしているのか。なぜ消えずに残り続けたのか……。彼女の作品群は、つねに問題提起とともに存在します。

「作品の中に、既存の概念に反する要素や、それに対する違和感を必ず入れるようにしています。誰だって「こうあるべき」って世の中から決められることで、抑圧されている部分ってありますよね。それをできるだけ開放したい。

女性のキャラクターを描くことが多いのも、同じ理由です。歴史において弱者だった時間が長いので、自分の作品を通して、供養することができればいいなという思いがあります」

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PHOTO by Genta Hisada

はりー

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テキストレーター(テキスト、テキスタイル、イラストレーション)。

2014年 テキストとイラストレーションをテキスタイルにして身につけるブランド《mon.you.moyo》を開始。
強い女の子をモチーフに、自分も一緒に強くなるためのイラストレーションを展開しています。
Monはフランス語で「私の」、youは英語で「あなた」、moyoはスワヒリ語で「たましい」。
私のあなた、そのたましいを必ず手に入れる。

mon.you.moyo 公式サイト

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