「子供のようで鉅人、鉅人のようで子供」。大阪発、ハイテンションかつシュール、でも人情たっぷり。そんな独自のパフォーマンスで人気を博す劇団子供鉅人から、代表の益山貴司さん(通称:ボス)が登場! 本サイトのコラムでもお馴染みですね。
今回は弟さんたちと共同生活を送るご自宅にお邪魔して、劇団やお芝居の話を伺うだけでなく、ボス(と、その弟さん??)の個性が爆発しているお部屋の写真もパシャリパシャリと撮らせていただきました! これは必見だ!!
笑いの先にある、伝えたいもの。
ジャンルも表現の切り口もさまざま。ボスが描き出す世界観は本当に多岐にわたります。と同時に、それらすべてに流れるひとつの通念のような“何か”も、矛盾することなく存在しているように感じてしまう。
“ボス印”とも言えるその何かとは一体なんなのでしょう?
「まずはやはり笑いですね。それがないと堪えられない。でも笑いだけを描きたいわけでもなくて、本当に伝えたいのは、笑いの先にある『生きる辛さ』みたいなものなんだと思います。そこに行き着くためには、笑いというタメをつくっておかないと、緩急がつきません。
こんな作風になったのは、やはり下町うまれだったことが原因なような気がしますね。小さな頃、周りにお金持ちの人もあまりいなかったし、一見すると残念そうな人がたくさんいました。でも、そういう人たちって得てして笑いを持ち併せている。そんな生活環境に生まれ育ったことが影響しているのかもしれません。
笑っているのに、だんだん悲しくなってくる。そんな作品が理想ですね」
すでに東京の演劇界においても独自の地位を確立しはじめ、それでもその動きを止めることのない劇団子供鉅人。ボスの中ではどんどんと次の展望や構想が生まれていっているようです。
「活動のサイズ感は順調に大きくなっていますが、そこに劇団の体力が追いついていません。そこを釣り合わすために、まずはファンや動員を増やしていきたいですね。ただ、常に少し背伸びをすることで、“カマしている”感じも演出したい。そのバランスは考えています。
あとは自分たちの劇団をプレゼンする難しさも克服すべきところ。というのも、普通の劇団って公演の内容はある程度似ていますよね。「コメディが主体です」とか「チャンバラが得意です」とか。その点、我々は良くも悪くもとらえどころがないというか……。本当にいろいろなパターンをやっているので、「○○な劇団です」と簡単に説明ができません」
表現や活動の幅が広すぎるがゆえに、特徴やカラーと呼べる部分がつくりにくいこと。その事実こそがそのまま劇団の特徴、カラーとなっているとも言えますが、やはりそれゆえの難しさも存在しています。
「自分なりの信念を持ってそういう活動を貫いてきたのですが、例えば前の公演がきちんとしたストーリーだったのに、その次はめっちゃ下ネタ、みたいなこともぜんぜんあります。そうなると、お客さんが友達を連れてきた時に「ごめん、こんなはずじゃなかったんだけど……」みたいなことも多発していて……(笑)。そういったところも上手にマネジメントしていかないとダメですよね」
2月には本多劇場での本公演『マクベス』も控え、2017年もその活動の幅をさらに広げることになりそうな劇団子供鉅人。演劇ファンならずとも、その動向から目を離せません。
「今年はまたヨーロッパでの公演を予定しています。僕がモノをつくる上で大切にしているのは、インプットとアウトプットのバランスです。アウトプットだけでは自分の在庫がなくなってしまいますからね。
だからこそ、今年のヨーロッパツアーは公演自体も大事なのですが、インプットをたくさんしてきたいです。ま、あとは慰安旅行も兼ねて(笑)。そういうことを繰り返しながら、これからもやっていけるといいな」
その語り口のせいか、もしくはまるでおばあちゃんの家に来たような部屋の雰囲気のせいか……。ボスの口から放たれる言葉は、とがった内容だったとしても、同時におおらかでゆるやかな空気が流れます。
それはおおげさにいうと、人間のもつ悲哀に目を向ける優しさというか、いやもっとおおげさにいうと、人間への愛というか……。そんな、とてもとても大きなものなのではないでしょうか。
その大きなカラダと大きなココロで“演劇のすべてを背負う”日は、遠い未来ではないのかもしれません。
PHOTO by Kaori Nozaki
益山貴司(劇団子供鉅人)
これまで、子供鉅人のほとんど全ての作・演出を行う。
お化けと女の子に怯える幼少期を過ごした後、20世紀の終わり頃に演劇活動を開始する。作風は作品ごとに異なり、静かな会話劇からにぎやかな音楽劇までオールジャンルこなす。
一貫しているのは「人間存在の悲しみと可笑しさ」を追求することである。
WRITER'S VOICE
これ、観とかなきゃ後悔しちゃうでしょ。
くしゃくしゃの笑顔に乗っかるぶ厚めのメガネにクリクリの髪の毛、そして立派なヒゲ。大きな身体から一瞬はなたれた威圧感とも呼べるオーラみたいなものは、愛嬌のあるその表情ですぐに隠されてしまいます。
2月公演『マクベス』では、なんと出演者が114人(それって舞台に入りきるの?)という驚きの内容。
普段、それほど観劇を楽しむことのない私ですが、こればっかりは観に行きたいなと。いわゆる歴史の証言者ってやつになれるかも?