すべての表現は、“意志”とともに。【はりー / mon.you.moyo】
リノベーションスタイル屈指の人気コンテンツ『ルームシェアコラム 帰りに牛乳買ってきて』の筆者、はりーさん。そうです。部屋に転がり込まれた方、コップと靴をどんどん使う方、そして、片付けない方です(あ、それは2人ともか……)
『帰りに牛乳買ってきて』では、ポップなトーンのイラストと、どこか癒し要素を感じさせるストーリーが人気のはりーさんですが、実はもう1つの顔がありました。もう1つというか、完全に別。別すぎる顔、なのです。
そんな複数の人格とクリエイティビティが、1つの身体に、そして脳内に矛盾することなく同居しているという事実が、はりーさんの作家性をより深いものにしているのかもしれません。
2つの表現に滲み出る、強い作家性。
ウェブマガジン「アパートメント(http://apartment-home.net/author/hurry/)」にて連載中の『日本のヤバい女の子』は、はりーさんの強烈な作家性が色濃く映し出される作品です。
「日本の民話に登場する女の子をモチーフにして、自分なりの解釈で物語を深く掘り下げ、再構築して、さらにイラストも添えます。
民話の中にも、違和感を覚えるレギュレーションのようなものが多々あります。『女の子はかわいくあれ』とか『愛想よくニコニコしていないさい』とか。とうぜん女性だけではなくて、『男は懸命に働くべき』とか『子供らしくふるまう』とか。
普段の生活の中で感じる違和感や疑問を調べていくと、民話にたどり着くこともありますよ」
『浦島太郎』や『かぐや姫』といった、誰もが幼少期に親しんだ作品や、名前すら聞いたことのないもの。それらがはりーさんの脳内でエディットされ、独特なタッチのイラストとともに提示されていきます。
「例えば浦島太郎は、亀に親切にしたにも関わらず、最終的にはひどい目に遭ってしまう。このストーリーに別の解釈や背景を付け加えることができないかなと。
主人公である浦島太郎にとって、乙姫はファム・ファタール(=運命の女性)的な存在とも考えられるし、民俗学の大家である柳田國男的な解釈だと、浦島太郎を成長させるための存在だとされています。
でも、それだけではありません。2人を対等の関係に見ることもできるし、だとしたら別れのシーンにも物語があったかもしれない。まあ、半分くらいは私のただの妄想ですけどね(笑)」
『mon.you.moyo』というブランド名で展開するスカーフ制作も、同じく彼女の作家性が強く反映されたものになっています。
「私の創作は、もともと絵からスタートしています。でも絵って、版画などでない限りは1枚だけだし、場所も限定されてしまう。
その点、テキスタイルは複製が可能です。元の絵が“セーブポイント”として家にあり、戦いに出る時にスカーフを装備するイメージですね。外に出れば同じものを身につけている人がいるという感覚は心強くもあります」
シルクにプリントされたmon.you.moyoのスカーフは肌触りがよくて、また流行や体験などに左右されることなく、ファッションのアクセントになること、間違いありません。
しかしこの1枚。“着飾るもの”という意味を超えた“記号”としての機能までを有しています。
「『安珍清姫』という伝説があります。恋をしたお坊さんに裏切られた女の子が、復讐を果たすためにヘビになって追いかけていき、お坊さんを焼き殺すというお話です。
その話が歌舞伎や能で演じられる時、ヘビに変身したことを表現するために、女の子がウロコ柄の服を着るんです。それだけで舞台上ではヘビになったということになる。その“模様を身にまとうことで、変身できる” っていう設定に、すごく感銘を受けたんです」
自身のブランドmon.you.moyoのロゴがウロコを模していることからも、『安珍清姫』に強くインスパイヤされたことがうかがい知れます。
PHOTO by Genta Hisada
はりー
テキストレーター(テキスト、テキスタイル、イラストレーション)。
2014年 テキストとイラストレーションをテキスタイルにして身につけるブランド《mon.you.moyo》を開始。
強い女の子をモチーフに、自分も一緒に強くなるためのイラストレーションを展開しています。
Monはフランス語で「私の」、youは英語で「あなた」、moyoはスワヒリ語で「たましい」。
私のあなた、そのたましいを必ず手に入れる。