朝、1杯のコーヒーを飲むこと。自転車に乗って移動すること。そして、食事をすること、誰かと話をすること、洋服を選ぶこと……。すべて、誰にとっても、まったく特別なことではありません。でも、そのひとつひとつの後ろにあるストーリーに、ほんの少し意識を向けてみれば、あなたの日常はちょっとだけ特別に輝き出すかもしれません。
“きっかけ”や、“きづき”のあるコーヒーショップへ。
オニバスコーヒーのオープン時に掲げた2つの約束。その1つ目である、人々のつながりの場として機能し、それぞれに人生を豊かにしていくという願いのもと、お店は急速に成長していきます。1号店となる奥沢店の後には、渋谷道玄坂に、姉妹店となる「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」をオープン。今でも旗艦店として人気を博しています。
「自分たちが大事にしているコーヒー文化を発信し、仲間が増える中で、さらに普及させていくためには、もっと人が集まる場所にお店を構える必要があると考えたんです。1号店である奥沢は路地裏でしたが、なるべく大きな通りに面した路面店で、とにかく人が日常的に集まりやすい場所で僕たちのカルチャーをプレゼンテーションしていきたかった。だから道玄坂の場所が見つかった時は、家賃は高かったんですが、即決しましたね。
そのお店をスタートさせる少し前に震災があって、多くの人が自身の生活に関して、見直し始めたタイミングでした。たとえば、トレーサビリティの高いものを口にしたいという思い。または大量生産のものではなく、手づくりのプロダクトを持ちたいという考え方。そんな価値観を提案するライフスタイルショップがたくさんオープンしたのもその頃です。そういった背景の中で、我々もコーヒーを通じて、日々の生活にきっかけを与えられるショップでありたいと考えて『アバウトライフ』という言葉を店名につけたんです」
東京のカルチャーのまさにど真ん中。渋谷の道玄坂でのチャレンジをカタチにした後は、今回、取材でお伺いした青山のお店をオープンさせます。ここも、根底にある想いは変わりません。
「アバウトライフコーヒーを作って、みんなで “豊かな生活”について、考えていました。たとえば、何も考えずにコンビニでお弁当やカップラーメンを買うのではなく、手づくりのお弁当を持ってきた方がいいんじゃないか。また、電車より自転車で通勤した方が街を楽しめるんじゃないか。実際に、お店のスタッフの多くが自転車で通勤をしていて、会社としても『自転車通勤手当』を出していました。
そうやって、コーヒーと自転車、さらに新しいライフスタイルを提案すべくアバウトライフコーヒーを運営していたところ、ブリヂストンの方が視察にきてくださったんです。そこで、多くのお客さんが自転車でお店に立ち寄り、カジュアルにコミュニケーションを図って、コーヒーを片手にまたそこを去るという光景を見て『まさにこれがやりたかったことだ』とお話をもらいました。それがきっかけで、このお店がスタートしたんです」
現在では、2017年にオープンした中目黒店を含めた4店舗での展開となり、どの店舗も、人と人のつながりを生み出し、さまざまなカタチで訪れる人たちに豊かな生活を提案していきます。
そして、もうひとつ大切なのが、2つ目の約束であるこだわりの豆とこだわりの製法で作られた、おいしいコーヒー。坂尾さんは、いかにして、そこまでコーヒーに魅せられたのでしょうか。
「まず、老若男女、みんなが好きな所ですよね。実は、缶コーヒーやコンビニコーヒー、インスタントなども含めると、世界的に見ても、日本人はすごくコーヒーを飲みます。ただやはり、カフェの文化はないですけどね。
あとは、コーヒーを介すことで、お客さんとの近い距離をとれるのも魅力だと思います。たとえば高級レストランのお客さんと店員だと、その関係性は絶対に揺るがないですよね。でもコーヒーショップは違います。すごくラフなコミュニケーションをとることができるんです」
豆の選定や焙煎の方法によって、果てしなくその味が変わっていく。そんなコーヒーだからこそ、手間をかけてまで、こだわりを追求します。特に原料となる豆に関しては、坂尾さんをはじめ、オニバスコーヒーのスタッフ自らが毎年、現地に足に運び、実際にお店で使う豆をじっくりと選定していくとのこと。
「ホンジュラス、ルワンダ、グアテマラ……。それらの国のたくさんの農園を見て、約60~70種類のコーヒーをテイスティングし、その中からいいものだけを選んでいきます。もちろん、現地の人たちのビジネスとして、サスティナブルなものにしなければいけないので、長くお付き合いができるように、農家さんと話をして、そこで抱いたフィーリングも大切にしています。
そうやって豆にもこだわり、また、それを調理する技術と経験も大切にします。つまり、コーヒーを入れるということは、“シェフの仕事”なんです。すべてのスタッフが、それくらいのプライドを持ってやっていますよ」
PHOTO by Kaori Nozaki
ONIBUS COFFEE
「ONIBUS」とはポルトガル語で“公共バス”、「万人の為に」という語源を持つ言葉です。バス停からバス停へと人を繋いでいく日常。そんなバスのように人と人を繋ぐという思いを込めて、オニバスコーヒーと名付けました。日常にとけ込んだ一杯、そんなコーヒーをお届けします。
RATIO & C
ブリヂストンサイクルによるコンセプトショップ〈レシオ・アンドシー〉は「自転車と」あらゆるライフスタイルとをつなぐコミュニティ&スペース。
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-1-26
営業時間:08:30~19:00(平日・併設するショップは10:00〜)/ 10:00~19:00(土日祝)
TEL:03-6438-1971