モノづくり大国、日本。ほぼすべての地域にモノづくりの現場があり、こうしている今も、多くの職人たちが、自らが磨いた技を用い、たくさんのモノを生み出していきます。
しかし時代はそれを是としません。大量生産・大量消費、スピード社会の波が、多くの職人たちを苦境に立たせています。それを「自然淘汰」と割り切るか、もしくは抗いを見せるのか。
その狭間で1つのライフスタイルを提案していく男性がいます。
次の時代へとつながる、新しい方法を模索して
モノを届けないネットショップ、にっぽん てならい堂。届けないということは、ユーザー側が足を運んで取りに行くしかありません。そうすることで、全国の作り手が望んでいた「人を連れてきてほしい」という声ともマッチすると中村さんは考えました。
「実際の現場でモノづくりを体験すると、商品のことをより深く知れますし、そこにまつわるストーリーや歴史までも考えることができます。誰にだって何となく気になっているけれど、実際はよく知らないことってありますよね? そういったものを改めて知る、学ぶ、体験する機会を提供するセレクトショップとして運営しています」
手作り、地場産業、伝統工芸、町工場……にっぽん てならい堂を通じて、中村さんが応援・協力をしたいと考えている全国のモノづくりに携わる人たちは今、どういった状況に置かれているのでしょうか。
「環境はやはり厳しいものです。大量生産ができないものばかりなので、価格競争に巻き込まれると圧倒的に弱い。また後継者の問題もありますね。たとえば35歳くらいで親の代から引き継がれることが多いんですが、そのあと5年~10年はやれても、自分の子どもたちにもう一度、世代交代ができるかというと、今のやり方では難しいのが現状です」
今のままでは続かない。何かを変えないといけない。現状に対する抗いの中で、モノづくりに従事する作り手は多いとのこと。
「既存の流通構造も、1つ前の世代のまま。小売店側と産地側にそれぞれ問屋がいて、間にたくさんの業者が入っている。だから、作り手たちもどんな人が商品を買っているのかが、よく分からない状態です。しかも市場縮小に連れ、現在では間に入っていた業者たちがいなくなってしまい、構造自体も破綻しかけています。これはよくありません。
より直接的にお客さんの顔を見て、店舗の売り場だけでは伝わらないストーリーや背景を知ってもらい、ファンを作っていく必要があると考えました」
モノが生み出され、消費者に届くまでの仕組みにも潜んでいる諸問題にも寄与すべく、中村さんは日々の取り組みに尽力していきます。
PHOTO by Kaori Nozaki / てならい堂より支給