vol.07 「名刺入れの依頼がきた」

こんにちわ。ねおみのるです。もう三月ということに驚愕しますね。

一月は「居ぬ」、二月は「逃げる」、三月は「去る」、とは良く言ったものですが、ひとつだけ気になっています。
居ぬ(犬)、去る(猿) ……。あれ? 二月は??

せっかくなら動物縛りにしてほしい!

しかし「逃げる」にうまく当てはまる動物って確かにいないんですよね。
キジ(雉)になれば万事OKなんですが、まったくかすりもしないですしね!

さて、まあ関係のない話は置いといて今回は名刺入れの依頼が来ましたよ。

ビジネスパースンのひちゅじゅしん(必需品)ですね!

やはり最初はアイデアしたため

今回の依頼……。なんか……、若干試されてる感があるんですよね……。 
 
「もちろん普通の名刺入れなんか作らないよね?」的な。依頼者への勝手なイメージかもしれないんですが、たぶん間違っていないと思います。
 
そんな依頼者の希望としては
 
・色は黒と白!
・PASMOなどのカードも入れるのでいくつかポケットも欲しい
 
のふたつのみで後はおまかせ! ということだったのですが、
 
色の希望が黒と白!
 
黒はともかく、白の革ってね、個人的にすごくやりにくいんですよ。
 
何でかって? 黒い革には黒い糸を使いたいじゃないですか。と、なると
c_7_01.jpg
こうなるんですよね……。
白い革に濃い色の糸目ってすごく目立ちます。個人的にちょっとこの感じあまり好きじゃなかったり。

ではどうしよう? 

黒と白の革を直接張り合わせるのを避けたデザインにするしかないですね。
なんとかやりようはあるか……。


それと、これは僕がいつも名刺入れを使っていて思っていることなんですが、「自分の名刺」と「もらった名刺」は別のポケットに分けた方が使いやすいですね。

現在僕が使っているのは同じポケットなんです。

全然名刺の整理をしないので名刺入れの中はもう常にごちゃごちゃなんですね。

おそらく依頼者はきっちり整理するタイプの方だとは思うのですが、ポケットが分かれているにこしたことはないはず。

それと普通の名刺入れだとちょっと面白くないのでちょっとひねりたい。
c_7_02.jpg
デザインを考えます。

あっ、このページ以外もにいっぱい書いてますからねっ! 考えてない訳ではない。
c_7_03.jpg
手書きで考えたものを図面に起こします。今回は細かい調整がありそうだったのでパソコンでやりました。
c_7_04.jpg
図面をプリント。パーツ自体は少ないんですけどね。
c_7_05.jpg
厚紙にプリントすればそのまま型紙として使えますね。

いよいよ制作していきます。

さて、まずはポケット部分から作りますよ。

白い革を内側のポケット部分に使うんですが、
c_7_06.jpg
用意したままではちょいと分厚いです。

上の写真の器具は革を挟んで厚みを計る道具なのですが今で2mm近くありますね。

このままでは厚すぎるので薄くしましょう。
c_7_07.jpg
はい、ドン! 『革漉き機』です。いつの間にか入手していました。

背後の生活感はスルーしてください。

この漉き機で薄くしていきます。
c_7_08.jpg
ブイーン。ブイーン。
c_7_09.jpg
まだまだ下手なので荒いですがこのように楽に革が漉けます。

上手く漉けると気持ちいいです。

これを繰り返して薄くしていきます。その結果……、
c_7_10.jpg
おっ、狙い通り約1mmくらいまで薄くなりました。
c_7_11.jpg
そして型紙に合わせて切りぬきます。
c_7_12.jpg
折るとこうなるんですね。ポケットは独立した作りなので黒い糸で縫うことはありません。
c_7_13.jpg
裏側(床面)はおなじみトコノールで綺麗にしておきます。

さて、次は外側を作りますよ。

黒く染める

c_7_14.jpg
これは染色用の革であらかじめ油分などが抜かれてるんです。

今回はバチックという染料で黒く染めていきます。
c_7_15.jpg
筆にとり、
c_7_16.jpg
今回は薄めずそのまま黒く塗っていきます。

染色、染めるということに関してはまだまだ勉強不足なんです。

黒じゃない色の場合、革を先に濡らしてそこへ薄めた染料を重ねていくやり方をしてるんですが、今回もそうした方が良かったのかな?
そのあたりは謎のままですが、特にムラにもなっていないので今回は良しとしましょう。
c_7_17.jpg
2枚が真っ黒に。右はポケット用に薄く漉きました。
c_7_18.jpg
さて、黒く染めた後はレザーフィックスを上から塗ります。
これで色落ちなどが防げる訳ですね。ニスみたいな感じです。
c_7_19.jpg
まんべんなく塗ります。
c_7_20.jpg
続いて中面につけるポケットも同様の手順で用意します。部屋がカオスですね。ずっとケイオスっす。
c_7_21.jpg
これらもトコノっときましょう。

やっとパーツが揃いました。

なんか各パーツの下準備が地味に大変でしたね。

穴空けを先にすませる。

さて、パーツを組み合わせていきます。これでやっと形が見えてくるはず。
c_7_22.jpg
こんな感じに組み合わせます。って分かりにくいですね。
c_7_23.jpg
カードケースのコバを取り付けた後では濡れないので、先に黒を塗っておきます。
c_7_24.jpg
さて次は穴空けですね。
c_7_25.jpg
両面テープで仮止めをし、縫う箇所に穴を空けていきます。
c_7_26.jpg
トントントンと。
c_7_27.jpg
すべての穴が空いて準備完了。
c_7_28.jpg
ボタンを先に取り付けておきます。

縫い合わせます!

c_7_29.jpg
端にボンドをつけ少し乾かします。これはちょっと塗り過ぎましたね。多分貼り合わせた時にはみ出してきます。
c_7_30.jpg
貼り合わせてコロコロとローラーで押さえます。たぶん美顔器のような感じです(使ったことはありません)

やはりボンドがはみ出ました。あとでヤスリで削っておきましょう。
c_7_31.jpg
さて、今回使用するのは黒糸と白糸。
c_7_32.jpg
まずは黒から。糸にロウ引きを行います。
c_7_33.jpg
ちくちくと縫います。
c_7_34.jpg
縫い終わりました。黒い革に黒い糸なので目立たないです。

さて、次はポケットと外側の革を重ねます。

真ん中にちょっと謎の穴があいていますが、ここには遊び心を入れますよ!
c_7_35.jpg
まず2枚の革を重ねて下の穴にボタンの受けを取り付けます。
これだけで一応は固定できています。
c_7_36.jpg
さて、ここでアクセント。ちょっと変わった糸。
七色に染められたカラフルな糸ですね。
c_7_37.jpg
針に付けるとこんな感じ。

これをさっきの謎の穴に……。
c_7_38.jpg
こうなりました。黒と白のモノトーンだけでは面白くないのでちょっとだけカラフルな色を入れたかったのです。
c_7_39.jpg
さて、次は白い革のポケット部分の区切りを縫い合わせますね。
c_7_40.jpg
いぎー! ここ縫いにくい!!
c_7_41.jpg
ちょっと苦労しました。
c_7_42.jpg
さて、次はさらにもうひとつポケットをつけます。
このみっつめのポケットは名刺の予備を入れておいたり、カード類を入れておいたりと、フリーなイメージです。
c_7_43.jpg
これですべて縫い完了。

コバを仕上げて完成

さて、最後はそれぞれのコバ(フチ)を仕上げて完成です。
c_7_44.jpg
この部分ですね。

まずヤスリをかけた後に、トコノールで磨き、
c_7_45.jpg
細い筆で黒を入れていきます。

よし! やっとこさ完成です!! 
c_7_46.jpg
c_7_47.jpg
いかがでしょう。

外身は一見シンプルなデザインですが、中を開けるとなんだこりゃ? のようなデザインに出来上がったように思います。名刺の枚数も一杯入りますよ。

いざ納品!

もしかしたらシンプルな作りの名刺入れを求めていたかもしれないので、実はダメだし出るかも……と、ドキドキしながらお渡ししました。
c_7_48.jpg
ほう……
c_7_49.jpg
ほほう……
c_7_50.jpg
ふむふむ……。
c_7_51.jpg
(リアクション、わかりづれーな)

ど、どうっすかね……?
c_7_52.jpg
うん、いいんじゃない! 気に入った!!

ちょっと大きいけどね(笑)
c_7_53.jpg
うわ〜、よかった!

正直、「もっとシンプルなやつを作り直して」って言われると思ってたよ。
確かにちょっとでかいしな(笑)
c_7_54.jpg
外はきっちりだけど、
c_7_55.jpg
中を開くとちょっとだけ「おっ?」って思わせる。
狙い通りにできたかと。


名刺入れに限らず、簡単に作ろうと思えば作れるものはたくさんあるんです。
でもそこにちょっとしたオリジナリティやインパクトを感じてもらえるようなものを作っていきたいですね。

では、今回はこのへんで! また来月!!
c_7_56.jpg
たくさん試作した残骸の一部。

【決定版】レザークラフトの道具、最初に欲しいのはこれ!

「レザークラフト最初にあったらいい道具のはなし」の記事に登場する道具たちを集めました。近場に道具が揃うショップが無くても大丈夫! こちらで全て紹介します。登場した道具を揃えれば、いよいよレザークラフトデビューができますね!


【決定版】レザークラフトの道具、最初に欲しいのはこれ!

ねおみのる

profileneo

普段は普通のサラリーマン。
あるとき独学でレザークラフトを始め見事にはまる。

以来、頼まれた物など失敗や試行錯誤を繰り返し作り続けている。

今欲しい物はリアルに革漉き機とミシンだが、部屋に置く場所が多分ない。